テロとひこうきと自由

米機爆破未遂犯の父の通報、警戒リストに反映されず 大統領が検証指示 写真4枚 国際ニュース:AFPBB News
オバマ大統領、情報見逃しは「容認できない」 航空機爆破未遂めぐり 写真1枚 国際ニュース:AFPBB News
結局の所、またもや失敗した航空機テロの防止、ってオチなんだろうか。


9.11の時も同じような事言ってた気がする、「防止策の不備のせいで止められなかった」と。しかし「お前がそう思うんならそうなんだろう お前ん中ではな」という話しか見えない。限りなく透明に近いポジショントーク
ぶっちゃけてしまえば、まぁこうした航空機テロを完全に無くすのはほぼ不可能という結論がそこにある。ついでに言えば、今回の件でまたもや「テロは貧困から生まれる」というのが否定されてしまいましたね。



例えばこんな話もあって。
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20100107-OYT1T00763.htm

 厚労省北米大陸でウイルスの発生が確認された昨年4月、流行地のメキシコ、米国、カナダから到着する直行便で検疫を強化し、5月末までに計8人の感染を確認した。だが、同月中に渡航歴のない感染者が国内で見つかり、検疫の効果を疑う声が相次いだ。

 研究チームは、ウイルスの潜伏期間、検疫で捕捉できた感染者数、簡易検査の検出率などのデータをもとに、検疫をすり抜けた感染者数を推計する手法を開発。潜伏期間を2〜7日、患者の何%を簡易検査で捕捉できるかを示す「検出率」を、実態に合わせて70%として計算したところ、8人が見つかった5月末までの間に、約14倍に上る計113人の入国を許したとの結果が出た。

http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20100107-OYT1T00763.htm

少なくとも検知できるような症状、発熱とか具合が悪いとか、が見えない潜伏期間があるようなモノは止めるのは不可能だと。うん、まぁそうなんでしょう。それでも焼け石に水とは言え、やらないよりはマシかもしれないからがんばる。努力する姿は美しい。
こうして、テロリストのような「明確な悪意」をもっていないただ極普通の一般市民でさえ、「もしかしたら俺インフル掛かってるかもしれないけど捕まったらメンドイし黙ってれば解らないだろう」的な発想で、しばしば、こうした検疫をくぐり抜ける。あるいは本気で何も考えずにやっている人でさえ。
ならば周到に準備されたテロリストが抜けられない理由なんてどこにもない。



で、こんな話もある。
英空港に全身透視スキャナー導入へ、「児童ポルノ規制法に違反」と市民団体 写真2枚 国際ニュース:AFPBB News

 ゴードン・ブラウン(Gordon Brown)英首相は今週、前年12月25日に起きた米機爆破未遂事件を受けて、治安強化措置の一環としてヒースロー空港などの英国内の空港に全身を透視できるスキャナーを導入すると発表した。

 プライバシー保護を訴える複数の団体は、英紙ガーディアン(Guardian)に対し、スキャナーが製造する画像は「実質的に全裸にされる」ほどのクオリティーだと主張し、乗客のプライバシーを保護するための対策を講じるよう呼びかけた。

 市民団体「子どもの権利を求める行動(Action On Rights For Children)」のテリー・ダウティ(Terri Dowty)氏は、このスキャナーが、子どもの写真または「擬似写真」を製造することを禁止した児童保護法に抵触する可能性もあると述べている。

 ダウティ氏は、5日付の新聞コメントで、「(空港に)このような全身スキャナーを使用する法的権利はない」と主張した。

英空港に全身透視スキャナー導入へ、「児童ポルノ規制法に違反」と市民団体 写真2枚 国際ニュース:AFPBB News

うわー恐ろしい。プライバシー保護バンザイ。
勿論プライバシー保護を金言としてそれを訴える事自体は単純に否定されるべきものではない。ただ今回のような話の時、「プライバシー保護とテロリスト対策どっちが大事なんだ」と言われた時どうすればいいのか?
その意味でテロリストは自由社会の敵、というのはすごく正しい。二重の意味で。人々に直接的に害を成すことと、その自由社会の自由を間接的に侵す、という意味において。そう言いながら得てしてプライバシー保護団体はその怒りを政府に向けちゃう訳だけど。


テロリストを100%止めるなんて夢物語でしかない。
けどそんな事は勿論言えない。大統領自身が「航空機のテロを完全に止める事は不可能です」なんてとても。だからまぁチェンジとか言ってた人も結局以前見たような言説になってしまうのでしょう。「対策が不十分だった」なんて当たり障りのないあれ。


こうして防止策の不備や社会全体に与える影響によって、『テロの経済学』(アラン・B.クルーガー著)でも言われていたように結局、彼らは「効率がいいから」でやっている。航空機を狙う事は効率が良い。手段のリスクと成功時のリターンを考えた結果。
日本で起きた「地下鉄サリン事件」の後、世界初の事例だったのを取りあげて、「今後同じような事件がおきるかもしれない」とか言われた事があった。けれど結局9.11で、地下鉄よりも航空機の方がもっと効率が良い、と証明されてしまった。だから彼らはそれを狙う。
そしてテロに対応する側は少しでも「効率」を下げようと涙ぐましい努力を続ける。で、プライバシー保護だとか警察国家だとか自由社会の敵だとかって怒られちゃう。笑えるんだか泣けるんだか。


つまるところ、こうした航空機テロから見えるのは、飛行機が墜落の可能性が0%に決してならないようにテロに会う可能性も0%には決してならない、という極当たり前の結論。そして恐らく、航空機よりももっと「効率の良い」目標が生まれるまで苦難は続く。テロが根絶されるよりも、航空機を狙うテロが時代遅れになる方が早い。
うわーすくえなーい。