精神までは救えない

藤岡弘、自殺大国日本に思う 拝金主義と「大戦争」 : J-CASTテレビウォッチの周辺で見た自殺の話。
経済的苦境だからとか、あるいは日本社会のシステムのせいだとか、確かに頷ける部分はある。


さて置き、自殺の最大の原因は「病苦」なわけで。
およそ半分近くの人が身体的・精神的な病苦から自殺するとされている。*1


で、特に問題とされる、高齢者の自殺があると。まぁこれって当たり前の話ですよね。
日本は、自殺大国であると同時に、そして同時に平均寿命最長国であるんだから。当然高齢者の方が病気やケガのリスクは高い。
日本の医療レベルは世界でもトップクラスで、そしてまたアメリカとかと違って皆保険制度もある。だから日本じゃ病気やケガになっても、結構なレベルと確率で治療を受ける事ができる。つまるところ、中々死なない。
糖尿病で手足が腐っても、目が見えなくなっても死なない。ケガで耳が聞こえなくなっても、口が利けなくなっても、体中がマヒになっても、あるいは内臓の一部を取り除いても死なない。ガンだって助かる見込みはそれなりにある。後遺症は少なからず残っても、死ぬ所まではいかない、生きていける。
挙句には、自立呼吸ができなくなっても(一応)生きてはいるし、植物状態になっても意識があることさえある。*2


そんな奇跡のような日本の医療は、確かに体そのものは治療する事ができた。昔は多くが死んでしまった例でもとりあえず今なら生きていける。現代医療の結晶のおかげで。
それでも、後遺症や病気の苦しみで、自殺してしまう。
医療が進歩して、かつては死んでしまうような事例が、何とか死なないレベルにする事ができた。しかし結果的に、そんな「何とか死なないレベル」が100%全ての人に幸福だったかと言うとそうではなかった。
医療の進歩は、多くの救えなかった命を救えるようになると同時に、ぶっちゃけてしまえば、死んだほうがマシだった、と思う人も生み出してしまった。


身体を救う事はできても、その精神までは救えなかった。


まぁそんなこんなで、結局の所、自殺が減らない最大の理由は「未だ医療技術が進化の過程にある」という事だよなぁ、と思うわけです。