帝国主義は永遠にここにある

昨日のギリシャ日記関連。
ギリシャの財政危機にいわゆるアメリカの金融機関、ゴールドマン・サックスやモルガン・スタンレーなど、が絡んでるという話が出てるらしい。


日本語のブログだとスウェーデンの今さんが詳しい。

ただ、ギリシャ財政問題は、何も金融危機以降に始まったわけではなさそうだ。ギリシャ政府は長年にわたって統計をごまかして財政赤字の実際の大きさをEUの本部に隠していたというし、しかもその隠蔽工作アメリカの金融機関が加担していたというのだ。

たとえば、投資銀行であるゴールドマン・サックスJPモルガンは、金融デリバティブを使って、ギリシャの国家歳入を一時的に増やすという巧妙な技を提供してきたという。これは、ギリシャ政府に対する事実上のローンなのだが、デリバティブの一種である為替スワップ金利スワップを使うと、その取引を「為替上の取引」や「売り上げ」と扱うことができ、財政のバランスシートの「債務面」に記載する必要はなかったのだという。そのため、外部の人間にはギリシャ政府の財政赤字の実態が見えにくくなっていた。

ギリシャ財政危機-短期的思考と問題先送り - スウェーデンの今

簡単に言ってしまえば、ギリシャは国有資産を証券化してそれを担保に前借してキャッシュを手に入れていた。例えば空港発着料や高速道路料金やあるいは国営宝くじの売り上げ等と引き換えに。
個人・法人の中ではありそうな話ではあるけども、実際に国家で、しかもギリシャという先進国でもやっちゃうとか。スケール大きい話です。さすが禿鷹とか言われるだけの事はある。



さて置き、こうした事例から読み取れるのは、「ギリシャ必死杉」とか「アメリカ死ね」だとか「状況はそこまでヤバいのか」とか色々あると思います。しかしまぁ個人的に思うのは、帝国主義膨張主義という一集団による他集団の支配は、最早国のレベルで語られる物じゃないって事だと思うんですよね。
確かにかつて、帝国主義植民地主義と言われた、強国による他国の支配は現在において時代遅れのものとなった。国家はそのルールとあるいは自らの意思によって領土や権益を他国に向けて膨張させる事をやめた。
それは合理的でないと気付いたからだし、あるいは道徳や高尚な理念によって。


しかしいくら国家自身が自重した所で、企業や個人において、そうした対外的な膨張性向が無くなるかといえばそんな事はまったくなかった。


かつて「儲かるから」という理由で行われた国家による帝国主義は、実は国家自身は全く儲からなかったという事実によって衰退した。
そして「儲かるから」という理由で行われている企業や個人による帝国主義は、実際に利益をあげているので膨張し続けている。
私たちは彼らを非難する事ができるだろうか?
他者を巻き込んででも利益を追求しようとする姿勢を。資本主義の概ね本質である姿勢を。つまり投資や市場を外部に求める事は資本主義の本能でもある。現在の私たちだって、「もっと日本は海外進出すべきだ」とか「外需を」とかニュースで言っている事に対して、それが問題になると思う事は殆どない。
さて、私たちは胸を張って「他者に向かって利益を追求する事は悪い事だ」と言えるだろうか。


もちろんこうした例に対して、「私たちは彼らとは違う」と言う事は確かにできる。彼らと違って道徳があるし、金儲けが全てではないと思っているし、公益の為にやることだってあると。
しかしここで思い出さなくてはいけないのは、かつての国家による帝国主義はそうした声の元に正当化されてきた、ということ。
例えば国境の向こうに住む同胞の為だとか、生存圏だとか、防衛戦争だからとか、あるいは欧米植民地解放の為だとか、挙句には「神」の為だとか。まぁ大抵の場合、そんな高尚な理念や正義はロクでもない戦争の大義名分として使われてきた。
あの時の彼らだって多分同じように言ってたんでしょう。「私たちは彼らと違う」と。


その意味で最初にあった、アメリカが悪い、という意見は確かに正しいのかもしれない。国家の元の企業や個人を律する事ができるのは、その国家だけなのだから。アメリカが彼らを監督できていないのが悪いと。
と言っても監督が「できている」国家は一般に赤い国でよくある統制国家と呼ばれているんですけどね。