温暖化問題が解決しない政治的な三大理由

温暖化問題を始めとする、環境問題解決の為に越えなければならない政治的難関。それは少し前にあったクライメートゲートの事件が出るまでもなく*1、政治的に地球温暖化のような問題の解決は難しい。それはむしろ科学的というよりは主に政治的な問題のせいで。

①「世界規模の対応」という机上の空論

多くの人が語るように、地球温暖化の問題は世界規模に影響を与える。だからこそ「全世界規模での対策が必要なんです!」とよく環境運動家な人々は訴える。まぁ確かにそれはそうかもしれない。各個人・各企業・各国家よりも世界全体で対応を協力しなければならないと。
しかし、そんな対立を乗り越えての「全世界規模の政策の一致」などこれまでの歴史上一度も達成した事がない。
私たちはそういった包括的な解決を実現させた事も、その実現に必要なより実効性のある上位統合権力組織を生み出した事もない。戦争の問題においても、核兵器の問題においても、経済の問題においても、そんな全世界で一致できた実効性のある政策に同意できた事は一度もない。あるいは国際同盟や国際連合や経済や核問題等において私たちはこれまでそんな主権国家以上の権力を行使できる国際機関を生み出せた事もない。
それなのに何故簡単に、言ってしまえば良心や危機感だけで、そうした人類史上初の達成がなされると信じる事ができるのだろうか?

②「後進組の権利」を誰が保障するのか

日本やあるいは欧米各国のような先進国は先んじて環境を汚染してきた。確かにそれは一つの罪ではある。
では私たちの後を同じように追おうとしている後進組(中国・インド・ブラジルなど)に対して何と言えば良いだろうか、そもそも彼らに止めろという権利があるだろうか。*2
よっぽど傲慢な人でないのなら、私たちはそれを止める権利など無いと答えるかもしれない。しかし同様に、彼らに先進国の過ちを繰り返さす訳にはいかないとも思う。だけど、それはどうやって? 私たちはその分に見合うような保障を与えるべきだろうか。全ての先進国と全ての後進国とそれ以外の国に分けて、誰もが納得できるような保障が用意できるのか? と言うと、温暖化問題だけでなく経済問題や核問題でも、これまで明確にそれについての答えを出せた人は、誰も居なかった。

③悲しい「国内政治の優先順位」

私たちはそんな地球温暖化の問題を知っている。確かに知ってはいる。だけどそれだけを気にして生きていけるのかというと、絶対にそうではない。普通に食べて着て住んでいかなければならない。そんな日常生活の中で地球温暖化の問題はどこまで大きな割合を占めるだろうか。
私たちは地球温暖化問題だけで生きている訳では決してない。
だからそんな環境問題は、直接的な被害が無い限り、ごく当たり前に後回しにされる。*3勿論直接的な被害が発生する身近な公害問題は例外として。それは逆説的に地球温暖化は、当然の結果として、そんな例外に入らない。だからこそ、アメリカやオーストラリアのリベラルな政権でさえもごく当たり前の流れとして、キャップ&トレードのような法案は無かった事にされた。それよりももっと直近で重要な事があるから。だからこそ同様に鳩山首相の某25%が批判されているわけで、もっと他に優先してやる事があるはずだと。

どれもが原因でかつ結果という両義性

結局こうした要素はどれもが原因となりどれもが結果として残る。
国内政治の無関心が国際合意の障害となるし、国際合意の未達成が国内政治の無関心を呼ぶ。途上国と先進国の合意が為されない限り、国内政治では対策に意味が無いと叫ばれる。途上国と先進国の合意が為されない限り、例え意欲のある先進国の一つが実行に移したところで、その産業はどこか他の国で変わらずにやっていくだけで、結局何も変わらないのだから。
こうして見ると②からやろうとしているCOP-気候変動枠組条約のやり方は正しいように見える。だけど悲しい事に、そんな意味のある世界規模な合意と統合権力ができたことなんて人類史上一度も無かったんですよね。そして最初に戻ると。リベラルな人々が期待した、何か進むと予想されたCOP15は失敗に終わり、次のCOP16もそんな失敗を乗り越える事はできそうにない。国内政治に生きる人々は、そんな事より優先しなければならない何かと戦わなければならないから。


だからこそ、環境問題はどこまでいっても、政治問題なわけですよね。地球温暖化の問題は私たちの生きる産業社会の欠陥と同時に、政治システムの不完全性をも表出させている。私たちがそんな大局的な解決方法に至る事は当面ない。
科学技術による地球温暖化の問題が解決されるのが先か、あるいは国際政治の進化が先か、なんかもうどっちもすごい倍率薄そうな感じです。
貴方ならどちらに掛けますか?

*1:その本質の問題への影響はともかく、彼らは一般の人々の支持や信頼を失った

*2:ちなみに第一次大戦後、当時の先進国グループは植民地と帝国主義ルールの終焉を一方的に決めた結果、後発組に猛烈に反発されて、結局また戦争になった

*3:それはつまり海面上昇で沈むツバルのような国と私たちの危機感の差でもある