「ググレカス」の先にあるものその三-人工知能の必要性-

というわけでしつこく続く「「ググレカス」の先にあるもの」を考える日記。
「ググレカス」の先にあるもの - maukitiの日記
「ググレカスの先にあるもの」の幸運例 - maukitiの日記


で、今回のネタ。
インターネットによって私たちはより賢くなってるの? よりお馬鹿さんになってるの? | ギズモード・ジャパン
インターネットの発達の結果として私たちは、より賢くなっていく、というのはまぁ素直に理解できる。しかし逆の可能性、より「馬鹿になっていく」という事だってあるかもしれないよね、というお話。

Carr氏の主張はインターネット上にある有り余る情報はそのままただの有り余る情報にすぎない、この過剰で巨大な情報によって我々は散漫で浅はかな考え方しかできなくなるのではないか、というもの。

インターネットによって私たちはより賢くなってるの? よりお馬鹿さんになってるの? | ギズモード・ジャパン

確かにそういう事もあるかもしれない。インターネットの発達によって、私たちのこれまで行ってきた頭脳労働の一部から解放された。確かに「解放」はされた。では、その解放された分のリソースを私たちは有効に活用することができるだろうか。恐らくこの議論の焦点はこの辺りじゃないかと思います。
私たちは空いた時間・労力を使ってより先に進む事ができるだろうか?
それとも、ただ空いた時間・労力を無為に消費していくだけなのだろうか?

そんな解放の対価として支払うもの

まぁ結局そうやって考えた所で、「出来る人」もいるし「出来ない人」もいる、順応できる人もいるし順応できない人もいる、辺りの当たり前の事しか言えない。でもそれだけじゃつまらないので「ならばそれは何故個人によってそんな差異が生まれるのだろうか?」を考えてみる。


ハヤカワ文庫SFの『彷徨える艦隊』*1シリーズの中にこういう話があるんですよね。

昔はコピーができない為に貴重な情報が消えたが、いまは、なんでもかんでもコピーされ、情報量が増えすぎて特定の情報を探し出せなくなり、事実上データが消えている。ここにあるとわかっていても、目的の情報を探し当てるのは、それこそ「干草の中から針を見つけ出す」より難しい。

確かにこれは「いつか来るかもしれない」未来の話ではある。でも、本質的にはもうこれと同じことを考えていかなければならないんですよね。
知識と経験を後世に残す方法が何も無かった時代から口述へ、口述から筆記へ、筆記から情報社会へ、そうやって私たちは後世に残すべき情報量を進化の度に爆発的に増やしてきた。そしてついに私たちは(事実上ほとんど)無限に近い情報を残せるようになった。
その中から一体どうやって必要な情報を得ればいいのだろうか?


昔は情報伝達量のコストの限界から、恐らくほぼ自動で「価値の高い」情報が(基本的には)優先して、伝達されてきた。その意味で私たちはそこまで苦労せずに、それでも多くの人がめんどくさいと思う程度には、今現在情報を集めることができる。
しかしそうした伝達コストの壁、という私たちにとって憎むべき障壁であると同時に情報の自動取捨選択装置だった物、が無くなってしまったら。
そんな将来のインターネット適応の差を決めるのは、そうして如何にして自分の求める情報に辿り着けるかどうか、辺りなのかなと思います。何か今でも言われてる「嘘を嘘と見抜けない〜云々」とかあるいは「インターネットはからっぽの洞窟」とかに近いオチになって悲しい。

本当に人工知能が必要な理由

つまり行き着くのは「様々な情報をその価値によって取捨選択して、必要な情報へ辿り着く」能力である。
確かに全ての人がそんな能力を持つのは難しいかもしれない。むしろそんなの少数派じゃないかという気さえしてきます。その一の日記で書いたように、かつてのような単純な「記憶」という作業から解放されたと思ったら、次は更に難しい事を要求される羽目になってしまう。
解放された作業と、新たに重荷となった作業、両者を較べて結果的にプラスとなるかマイナスとなるかは、まぁそれがつまり境い目なんでしょう。インターネットで先に進める人と進めない人。


上記のように考えていくと、ということは今後私たちに本当に必要なるのは、そんな全ての情報を網羅しつつ同時にファジーな検索ができる人工知能だという結論ではないだろうか。だからこそ、数多のSF作品で未来の人工知能が出てくる訳ですよね。やっと気付きました。HAL*2とかタチコマ*3とかダハク*4とかGARP*5とか僕も大好きです。
私たちの代わりに、そんな必要な情報をなんとなく曖昧なキーワードから見つけてきてくれるファジーな検索機能。それこそがインターネットの救世主であると。というわけで人工知能開発の皆さんがんばってください。そうすればもう「ウィルス ファイル exe  消したい」とか「夫 死んで欲しい」とか検索窓に入れる作業からも解放されるんですよ!


そういう訳で「インターネットによって我々はより賢くなっていってるのか? それともお馬鹿さんになってるの?」という問いに対して、あくまで個人的な答えとしては、
「ファジーな応答のできる検索機能が無い限り、全てではないにしろ、私たちの多くは賢くなれない」辺りでしょうか。

*1:引用は第二巻。というかストーリー全体のギミックの一つでもある

*2:2001年宇宙の旅

*3:攻殻機動隊

*4:『反逆者の月』

*5:『E・G・コンバット』