今後「メキシコ湾以後」とか呼ばれますよ多分

勿論元ネタはエマニュエル・トッドさんの『帝国以後』とか。
というわけでもうそろそろ言う事も無くなってまとめモードなメキシコ湾原油流出のお話。
それでも海底油田をやめられない国々 | ビジネス | 最新記事 | ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト

 世界の石油産出国を見ていくと、外国資本の石油企業による海底油田掘削に対して厳しい姿勢を取ろうとしている国は一つも見当たらない。それどころかオーストラリアなど一部の国は、BPが起こした今回の事故は自国の海底油田に注目が集まるチャンスと捉えているようだ。
 
 原油流出が長引けば、こうした姿勢もおそらく変わるだろう。だが厳重な安全対策を求める声が挙がる中でも、石油資源に恵まれた多くの国々は普段通りのビジネス----つまり向こう見ずな開発----を続けている。

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で、ニューズウィークの記事ではBPの事故があったとしても何も変わってないと言っている。確かに記事後半にある各国の事情を見るとその通りなのかもしれない。という事でまとめとして適当に考えてみる。

それでも原油はやめられない

今回の事故が証明したのは、それでもやっぱり原油は「戦略物資」である、ということですよね。
まさにBPが証明してしまったように、どの海底油田にだって今回のような事故の起きる可能性が極小確率にしろ存在する。だけど誰だってそんな事は起きる前から既に解っていた話なわけで。それが今回証明されてしまっただけに過ぎない。原因はどこにあるかは別の話として、多少の人為的ミスと多少の不運によって、そうした事は起こり得ると。
そんな極小のリスクが、原油の持つ戦略物資としての価値を上回るかというと、そんな事はなかった。
私たち先進国が数十年前に通り過ぎた、あるいは今現在に多くの後進国がやっているような、環境に対して多少の無茶をしてでも目的を達成しようという態度と同じように。今回の事件はいつか将来のどこかで「あれがきっかけだった」と語られるかもしれないけど、だけどそれは今ではないと。

回避された本当の恐怖

おそらく石油業界にとって真の最悪のシナリオは、今後事故による忌避感から石油掘削開発への投資が減る事なんだと思います。そして幸運にもそうした事は起きてないらしいと。
実際よく言われる「原油の枯れる枯れる詐欺」が詐欺であると証明し続けてきたのは、そんなあくなき油田開発への投資の熱意だと言われている。そんな発見技術と利用技術の進歩によって、消費量の増加以上の利用可能埋蔵量の増加さえも成し遂げてきた*1。もし、原資である投資が無くなってしまえばそうした進歩もなくなってしまう。それはまぁ確かに最悪のシナリオではないかと。
しかしそんな最悪のシナリオは、人々の海上油田への失望よりも、政府や企業たちのより強い意思によって回避された。

新しい武器

ともあれ、環境保護運動大好きな人々にとっては新しい武器を手に入れたことは間違いない。
今後はこうした企業の不手際、あるいは政府の不手際を殊更に強調していくことでしょう。「あんな事故があったじゃないか」と。そしてそれは確かに事実であり正論である。今回の原油流出は、本当に、未曾有の被害をもたらしたのだから。
「メキシコ湾原油流出事故」はその意味で後世に語り継がれるべき教訓、さらに金言へと昇華した。この事故によって実はもっとも得したのは、そんな環境保護論者たちなのかもしれない。
つまり「メキシコ湾原油流出事故」は、彼らの大義名分となったのだ。