だってあなたは国営だから

アメリカやオーストラリアにおいて現在進行形で進む中国企業の進出による軋轢、のお話。


/ WSJ日本版 - jp.WSJ.com - Wsj.com

【キャンベラ】オーストラリアの自由党と国民党の野党連合は、21日の総選挙で勝利すれば、アジアの主要貿易相手国、とりわけ中国との関係を再構築する構えだ。しかし中国との関係を複雑にしている問題を解決するのは、現労働党政権にとってと同じように野党連合にとっても容易ではないかもしれない。とりわけ野党連合内の保守派が国営企業、例えば中国の国営企業による資源投資を禁止するよう求めているからだ。

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まぁありそうな話ではあります。何故そんなに恐れてしまうのかってそれは、「政府系」で「国営」だから。
かつてバブル時代にあった日本がやっていたことと同じように見れるかというと、まぁそれはあんまりない。だってあの時は民間企業だったから。
勿論当時は当時でアメリカでも「日本による経済侵略だ」なんて煽られたりしたけども、しかし彼らは当然のように投資目的でその取引に参加し、そして実際に今振り返って見れば概ねその通りでしかなかった。


しかし、今回の引用先にあげられるような国営企業や、中国の表に出てくる企業のうちの幾つか(一部の人からすれば殆ど全ては)はそうではない。彼らは政府が出資した、あるいは政府そのものが所有する企業であるから。
無論彼らだって「投資である」と主張することはできるし、ある程度までは確かにそれも真実であると言える。だがそれで完全に安心できるのか、というと絶対にそれはない。その目的には安全保障上の問題や、あるいは国家戦略上の目的があるのではないかと買収される側は当然考えてしまう。
その他にも、国家による優遇政策助成金などによってその市場を支配される可能性さえある。*1
表向きは隠蔽される可能性を考えればそれは民間企業も国営企業だって大して変わらないと擁護することもできるが、それでもどちらが「より」懸念が強いかといえば後者であると答えるしかない。


投資自体に罪があるわけではないし、むしろ私たちは基本的には投資される事に価値さえ見出している。そして開放的な資本市場や自由貿易が成長や繁栄の源泉であると理解もしている。しかし行き過ぎた自由主義はそんな状況の崩壊をも招いてしまう。例えば利己的な誰かがそこに国家のパワーによる影響力をあからさまに持ち出したりしてしまえば。
現代に生きる私たちはだからある意味当然の反応として、政府系ファンドや国有・国営企業と名のつくものの振る舞いに敏感にならざるをえない。


さて置き、国営企業が進出することによる悪影響はそうした懸念や反発心を生むことだけではない。
今回の記事のようにそんな憎悪は、保守派やあるいは保護政策を推進したい人びとによって利用もされてしまう。「中国の乗っ取りを防ぐ為だ」という大義名分のもとに。
まぁ今回語られるような選挙争点としての議論が、どちらの要素が強いのかと言われると私には解りませんが。

*1:よく議論されるところで言えば韓国のサムスンとか、あるいは日本の郵政グループだってだからこそアメリカ等から文句を言われるわけで。