する側もされる側も得しないアフガニスタンの選挙妨害

「人間の善なる部分が民主主義を可能にし、悪なる部分が民主主義を必要とする」*1とニーバーさんが仰っていた民主主義の、悲しい失敗例のお話。


アフガン総選挙、開票進む 選挙違反の報告相次ぐ 写真1枚 国際ニュース:AFPBB News
http://www.cnn.co.jp/world/30000280.html

 国連(UN)は、武装勢力による攻撃の危険も顧みず投票所に足を運んだアフガニスタン有権者の「勇気と決意」を称賛する潘基文(パン・キムン、Ban Ki-moon)事務総長の声明を発表した。欧州連合EU)や北大西洋条約機構NATO)も同様のコメントを発表した。
 しかし、選挙違反を調べる不服審査委員会(Electoral Complaints Commission、ECC)には、すでに投票開始時間の遅延、脅迫、有権者でない者による投票、選挙人登録カードの不正使用、他人になりすました投票、投票を済ませた人の指に塗るインクの品質不良、投票用紙の不足などの問題があったとの情報が寄せられている。

アフガン総選挙、開票進む 選挙違反の報告相次ぐ 写真1枚 国際ニュース:AFPBB News

色々大変そうなお話ではあります。私たちにとっては極当たり前に(それでも偶に不正疑惑があったりしたりしているけども)民主主義の投票をやっているけども、しかしそれができない世界もあると。少なくとも現代社会に生きる私たちにとっては当然の振る舞いであるけれども、しかしそうではない世界もある。
そして現在のアフガニスタンではタイトルのニーバーの言葉から引用すれば「人間の善なる部分が民主主義を可能にする」はずが、それを上回る悪意によって失敗の危機に陥っていると。人間の悪なる部分、妨害しているタリバン武装勢力や腐敗していると言われるカルザイ政権の一部は、その是正の為にまさに民主主義を必要としているのに。


さて置き、これってある意味で「語るに落ちる」状況ではあるんですよね。
だって本当にタリバン側・選挙妨害側に有権者の支持や正当性があるのなら、そもそも初めから妨害なんてする必要が無いんだから。彼らは選挙で勝てないと自覚しているからこそ、妨害行為に走っている。それが解っているからこそ、かつて採っていた方法と同じ専制的で恐怖支配的な妨害行動に出ていると。
しかしそれが解っていても彼らは実力行使な妨害を止める事はない。彼らは民主主義のような「自由」の為に戦っているのではなくて、彼らの信じる「神」の為に戦っているのだから。よくある手段と目的が入れ替わるパターンです。


だから実際の所、アメリカや国連のみなさんの内の少なくとも一部は、そうしたタリバン側の墓穴を掘るような行動に内心ほくそ笑んでもいると思うんですよね。だって彼らが妨害すれば妨害するほど、彼ら介入した側の正当性の裏付けともなるわけだから。
まぁ不幸なのはそんな介入した側の正当性が証明されたところで、当のアフガニスタンの人びとの復興支援には(少なくとも短期的には)何ら寄与しないって事なんですけどね。