実は地球温暖化対策に誠実だった人たち

経済成長と温暖化対策という二者択一のお話。


http://www.cnn.co.jp/usa/30001600.html
http://www.47news.jp/CN/201101/CN2011012601000122.html

【ワシントン共同】米メディアは25日、オバマ政権で地球温暖化対策やメキシコ湾の原油流出事故の対策を取り仕切っていたブラウナー大統領補佐官(エネルギー気候変動担当)が辞任する見通しだと伝えた。

 今後、法律制定など温暖化対策を大きく進めることは困難になりそうだ。米紙ウォールストリート・ジャーナルによると、オバマ大統領就任に合わせて創設された同ポストがなくなる可能性もあるという。

http://www.47news.jp/CN/201101/CN2011012601000122.html

ということでオバマさんの掲げていた地球温暖化対策やキャップ&トレードは幕を閉じた。今回のオバマ大統領の一般教書演説が示すように、彼はまさに今後は「スプートニク・モーメント」を引き合いに経済回復を強調すると。
私たちはそんなオバマ大統領の変節を、不誠実であると非難できるだろうか?

「人類が全て死ねば地球温暖化は止まる」という極論

しかし実はある意味で、彼は誠実なんだと思うんです。ちゃんとブラウナーさんを辞任させ、更にはそのポストをも廃止しようとしているから。
上記「人間が全て死ねば地球温暖化は止まる」という極論が間接的に証明していることはつまり、「経済成長が止まれば温室ガスの排出量増加も必然的に止まる」という事実をも示している。ぶっちゃけてしまえば、私たちが望んでいる『経済成長』を成し遂げれば成し遂げるほど温室効果ガスの排出量は増えるし、逆に経済が停滞すればするほど温室効果ガスの排出量は減る。それはかつてあった石油ショックの時代が証明しているように。
「経済成長こそ、エネルギー関連の二酸化炭素排出の主要な原動力となっている」と。


だからオバマ大統領の以前までの態度、例えば医療保険改革の熱心な推進やブッシュ減税延長に頑なに反対していた態度は、つまりアメリカの経済にどちらかといえばマイナス効果に働いていて、しかし間接的に排出量削減の効果をもたらしてもいた。さすが地球温暖化対策に誠実だった旧オバマ大統領ですよね。
ちなみに我らが日本でも鳩山前首相の時の子供手当て等々により日本の経済に打撃を与えたという議論がありますけど、ある意味で彼もまた同様に誠実だったんです。彼はほんとうに自分たちの「二酸化炭素25%削減」という夢想的なマニフェストに対して誠実だった。だって日本の経済が停滞すればするほど、結果的に排出量は減るんだから。
それをやれば日本の産業は破綻するとか批判されていましたけど、それって逆なんです。「25%削減したら産業が壊滅する」のではなくて「産業が壊滅するからこそ25%削減できる」んです。


こうして導かれるのは、上記のような人事刷新から変節したと言われる新オバマ大統領も、あるいは日本の交代した管首相も、彼らもまた誠実であるということなんですよね。だってどちらもまるっきり(以前のような熱意をもって)「地球温暖化対策に邁進します」とは言わなくなったんだから。それは逆説的に、国家の経済成長に注力しようとする姿勢の証明でもあります。もし彼らが経済成長と同時に温暖化対策をします、などと言ったら確かにそれは非難に値するけども、しかし変節した故にそれを口にしなくなったのはむしろ誠実さの証明なんです。
誠実であるが故にブラウナー大統領補佐官を辞任させたし、誠実であるが故に最早かつての夢想的なマニフェストを口にすることはなくなった。
彼らはまさに、現代世界にある国家指導者のごく当然の態度として『経済成長』を選択した。そしてつまりそれは温暖化ガスの排出量が増えることを間接的に選択した。
でも一体誰が彼らの変節、経済成長を望んだこと、を責められるだろうか?