昔の人が神に祈るしかなかった理由

銃が人を殺すのではない、気候変動が人を殺すのだ。なお話。


「気候が紛争のきっかけに」、初めて科学的研究で示される 写真1枚 国際ニュース:AFPBB News
へーという感じです。へー。

【8月29日 AFP】気候の変化は、ときに紛争の原因だと指摘されてきた。たとえば、気候の変化で収穫量が激減し、飢えた農民が都市部に流れ込んだことが、1789年のフランス革命(French Revolution)に燃料を注いだとされている。
この説を支持する証拠は「粗雑」あるいは「逸話的」だと批判されることが多かった。だが、気候変動と暴力との間に明白な関連があること結論づけた初の科学的な研究が英科学誌ネイチャー(Nature)の8月25日号に発表された。

「気候が紛争のきっかけに」、初めて科学的研究で示される 写真1枚 国際ニュース:AFPBB News

もちろんそれが100%全てこの要因に求められるというわけでは決してないけれども、しかしそれでも確実に影響を及ぼしている。まぁ確かに昔から言われてきたお話ですよね。お隣の中国ではそれこそ常識のように語られてきた話ではあるし、そして上記で語られているような『フランス革命』の燃料にもなったと。
また、こうした気候変動から特に影響を受けるのは農民だけでなく、むしろステップ気候に住む遊牧民な人びともそれと同じかあるいはそれ以上の影響を受けるわけであります。乾燥した時期になると、彼らは牧草地を求めて本来の居住地域から離れた周辺部に散らばっていき、そこで現地の人びととほとんど必然的に争いを招くことになる。牧草地に恵まれた時期は平和な時代であり、そうでない時は戦争になった。有名なチンギス・カンさんの大遠征もそんな「乾燥した時代」だからこそ起きた、なんて言われたりするわけです。モンゴルの世界帝国は、彼の才能と、そしてあの『乾燥した気候』の二つによって成し遂げられたのだと。

 論文の主執筆者、ソロモン・ショーン(Solomon Hsiang)氏は、目に見えないエルニーニョ現象は内戦の原因の1つだと語る。エルニーニョ現象によって作物の収量が減り、ハリケーンの被害が発生し、水を媒介とした伝染病がまん延しやすくなることで、飢えや損失、失業、不平等などが悪化し、その結果、恨みや分断の感情があおられる。内戦リスクに影響をおよぼす他の要素としては、国の人口増加率と豊かさ、また政府にエルニーニョ現象に適切に対処する能力があるかどうかなどがある。

「気候が紛争のきっかけに」、初めて科学的研究で示される 写真1枚 国際ニュース:AFPBB News

ということで結論としてはやっぱり内戦が増えるらしいです。当たり前ですよね。昔と違ってその圧力を自国の『外』に逃がすわけにはいかない以上、内圧はどこまでも高まっていくしかない。
以前のほんとうの地獄はこれからだー - maukitiの日記でも少し書きましたけど、やっぱりそれは単純に人びとが飢えて死んでいく、というだけでは済まされない話なんですよね。そこで起きるのは病気の蔓延や暴力などの社会不安によってこそ、人びとは死んでいくのだと。そしてその数は戦争で死ぬよりもずっと多い。
ブライアン・フェイガンさんの『千年前の人類を襲った大温暖化』の中でこういうお話がありました。

    • 19世紀には、エルニーニョとモンスーン弱化で引き起こされた厳しい干ばつの結果、少なくとも2000万~3000万人が死亡した。これは19世紀のほぼ全ての戦争の犠牲者よりも多い。

気候変動はおそろしいなぁ。
そりゃ昔の人は神さまに祈るしかありませんよね。「豊作でありますように」と。