まさかの『文明の衝突』フラグ

散々バカにされてきたハンチントン先生の大復活の瞬間は近い! かもしれなくもない。なんか自分で書いててノリが恐怖の大王っぽい。


パレスチナ国連加盟問題、「和平の近道にはならない」米大統領 写真9枚 国際ニュース:AFPBB News
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/22927
トルコ・エジプトの民主枢軸
http://sankei.jp.msn.com/world/news/110921/mds11092121210005-n1.htm
なんとなく最近の中東関係のニュースを見てて考えたお話。
ハンチントン先生が述べた有名な『文明の衝突』と言えば、しかしその知名度故に、それはもう様々な人に「これはない」とネタにされる筆頭であるわけです*1。つまり世界は(宗教などによる)文化圏によって今後分断されていくだろう、と。例えばそれはキリスト教圏であったり、中華圏であったり、そしてイスラム世界圏であったり。
で、そうした主張は『9・11』で一瞬勢いを取り戻したものの、しかしやっぱりイスラム世界がそれで連帯することもなく『文明の衝突』論は相変わらずネタにされ続けているわけです。
それは主に「地政学的な関心は文化的類似性より優先する」というまぁ身も蓋もない現実によって。


しかし所謂一連の『アラブの春』からこうした風向きが変わってきたのかなぁとも少し思うんですよね。
まさに上記記事にある「トルコ・エジプトの民主枢軸」という試みにあるように、これまであった汎アラブ主義の失敗以降のイスラム世界連帯への試み――イランやサウジアラビアを盟主とする勢力争いに加えて、新たな多元的な『民主枢軸』は短期的には前者の二つの勢力と摩擦を生みながらも、しかし長期的には(少なくともかつてのヨーロッパと同じ程度には)緩やかに結ばれた「イスラム世界」が形成されていくのかなぁと。


確かにこうした動きは多くの面で『反米』な空気がもたらしていると言えるんでしょうけども、しかしそれを言ったらヨーロッパだって同様に少なくない部分でアメリカに対抗する為にまとまってきたとも言えるわけで。もちろん地政学的関心は文化的類似性よりも今でも優先しているんだけれども、しかし両者が重なるならばその限りではないのだから。
なんというか皮肉な歴史の繰り返しではあります。冷戦時代のアメリカやソ連に共通原則としてあった『分割して統治せよ』の終わり。かつて冷戦後にも『反米』をモチベーションにヨーロッパで起こった地域連合が、こうして中東でも起こりつつあるのかなぁと。

*1:それと同じくらい「これはない」とネタにされるのがフクヤマ先生の『歴史の終わり』ですよね。ちなみに僕は両方大好きです。