ウッドロウ・ウィルソンの再来

薄々思っていたけども、最近のオバマさんって名実共にそうなりつつあるなぁと。


http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/29266
以前からのオバマさんのチェンジ――特に医療保険改革をめぐるあの大騒動を見てて連想してしまうお話。

 オバマ政権発足からほぼ3年が経過した。がっかりした仲間たちは、オバマ氏には学習曲線を見いだす兆しすらほとんど感じられないと話している。いろいろな人に相談することもまだできておらず、「状況を改善するために努力する」ことも(それが必要であっても)好まないという。

 進言をあきらめてしまった民主党員も少なくない。「大統領は耳を貸そうとしない」とある上院議員はこぼした。「三つ子の魂百までと言うが、この状況は変わらないだろう」

 はっきりしているのは、オバマ氏は政治よりも選挙運動の方が好きだということだ。例のインナーサークルの存在を考えれば、これは意外なことでも何でもない。オバマ氏が来年の選挙をしのげるか否かはともかく、次の任期でこの状況が劇的に変わると考えるのは楽観的だと言えるだろう。

http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/29266

こうした記事を見ると、真っ先に思い出すのが100年前のウィルソン大統領の失敗なんですよね。確かにオバマさんは素晴らしき「あるべき」社会像を語っていますけど、しかし100年前の彼もそれに負けないくらい「素晴らしき理想」を語っていました。『十四か条の平和原則』とそれを実現する為の国際連盟の創立。それは私たちが現在目にしているような、伝統的なアメリカの価値観と新しい価値観の対立、という構図によって議論されていました。
そんな100年前の国際連盟をめぐるアメリカ中を巻き込んだ議論にあったのはしかし、いやもうほんとグダグダな党派政治による対立と、そしてそれを打破する為に(共和党との宥和ではなく)国民支持による一点突破こそを狙う大統領、というものでした。


特にウィルソン大統領は「主張を変えて恥ずべき妥協をするくらいなら、千回戦いに負ける方がいい」とあまりにも強固な意志を持って望んでいましたが、しかし結果的に見れば、そうしたウィルソン大統領の態度は共和党の反発だけでなく、身内である一部民主党の離反をも招いてしまうのです。ウィルソン大統領はそれでも尚、国民支持さえ得ることができればと、全国を遊説しますがそれも結局失敗に終わってしまいました。
彼は共和党潜在的な協力者ではなくただの反対者としか見ておらず、また自らが主導権を握ることに固執する余りに、結果として国民的な支持を得ることにも失敗してしまうのです。一般にアメリカが国際連盟に加盟しなかったのは、こうした行き過ぎた党派政治と、そしてあまりにも非妥協的なウィルソンの独立独歩主義こそが、その大きな原因であるなんて言われているわけです。


いやぁまるでどっかで見たようなお話ですよね。
理想を追い求めすぎて、失敗してしまう人たち。皮肉にもそれは彼らが自分自身の理想を正しいと確信しているからこそ、「話せば解る」と思い込み、そして彼らは妥協など必要ないと考えてしまう。しかしそれでもオバマさんは100年前の彼とは違って、少なくとも医療保険改革ではどうにかこうにか一応*1勝利しました。まぁ結局はウィルソンは後任の大統領選挙で、オバマさんは中間選挙で、どっちもボコボコにされて負けてしまうわけですけど。
二人はどちらもとてもためになる、そして当たり前な教訓を教えてくれていますよね。行き過ぎた党派対立なんて害にしかならない。政治指導者の役割とはそれを緩和することであって、煽ることでは決してないのだと。
まぁ私たち日本が何か言えた立場じゃ決してありませんけど。