『反ファシズム』の最後の砦となっているドイツ

それは比較的に経済へのダメージが少ないことの証左でもあるのかなぁと。


極右の犯罪におののくドイツ 強力な極右グループは密かに活動を続けている?  | 川口マーン惠美「シュトゥットガルト通信」 | 現代ビジネス [講談社]
わードイツこわーい。
さて置き、面白かったのは以下の部分。

 ただ、ドイツ人のために弁明したいが、一般のドイツ国民の、極右に対する許容度は非常に低い。左翼に対してシンパシーを持つ人は結構いるが、極右グループの支持される余地はほとんどない。だから、少数の、法律ぎりぎりのところで活動する極右が事件を起こすたびに、国民はショックを受けているというのが現状だ。今回もそうだ。

[http://gendai.ismedia.jp/articles/-/26933:title=極右の犯罪におののくドイツ 強力な極右グループは密かに活動を続けている?  | 川口マーン惠美シュトゥットガルト通信」 | 現代ビジネス [講談社]]

まぁそういうことでもあるんですよね。だからこそドイツではそうした犯罪により激しく動揺してしまう。
上記リンク先にあるようなあからさまな犯罪行為はともかくとして、しかし一般に政治勢力としての『極右』はドイツの周辺諸国と較べてかなり弱い存在であることもまた事実なわけです。一般にイメージされる『ナチス』なそれとは裏腹に、ヨーロッパ全体から見ても、ドイツでは極右グループが政治的にかなり弱体にある国家なんです。
例えば、デンマークや、オランダや、ベルギーや、フランスや、スイスや、イタリアや、オーストリアなどなど。そうした国々ではドイツのそれよりもずっと多くの極右な政党が、選挙によって、伸張している。


こうした構図は、以前に書いた日記のまんまだと思うんです。
なぜ欧州は狭量さを示すようになったのか? - maukitiの日記
結局の所、それは偏狭な『民族意識』の台頭というだけではなく、むしろ経済的な苦境こそがそうした空気を醸成してしまうと。
その意味で、ドイツさんが『例外的に』極右勢力の政治的台頭から免れているのは、ドイツ経済が欧州諸国の多くよりも(相対的に)マシな状態にあることこそにあるのかなぁと。まぁ勿論ドイツにとっての『思い出したくない記憶』という要素もあるんでしょうけど、今回のドイツのお話にしてもやっぱりドイツの中でも特に経済的苦境にある東ドイツで起きたのは偶然ではないのでしょうし。ついでに今回の記事の中でも、そんな数少ない極右勢力の議席があるのもそうした東独にあると言及されていますよね。そんな好調な経済がなくなったらどうなってしまうのかは、正直あまり考えたくない事態ではありますけど。


しかし皮肉な話ではありますよね。
歴史的に見れば本来ドイツこそが(こうした事件が起きてしまう程度には)最も縁があったはずなのに、しかし逆にドイツこそが極右勢力伸張に対する最後の砦となっている構図。この辺は現在のあまりに平和主義な私たち日本と構図は同じなのかもしれませんね。思い出したくない記憶だからこそ、戦前と180℃向きを変えた――あるいは変えようと決意を固めている人たち。


今大騒ぎしているユーロ通貨防衛としても、そして国内の極右勢力の台頭でも、こうしてドイツは最後のヨーロッパ守護者としての責任をおっ被せられている。まぁ昔から「欧州連合はドイツの拘束具である」なんて語られてきたことを考えると当然の帰結なのかもしれませんけど。
がんばれドイツ。