南北問題の真骨頂

こうしてまた失敗の歴史がひとつ。


asahi.com(朝日新聞社):京都議定書を延長 15年の「新体制」採択めざす - 国際
ということで案の定、COP17は何も決めないことを決めることになりました、と。素晴らしき先送り精神であります。まぁどうせその場に居た半分くらいの人は次の時に居ないだろうし、未来の人がんばれ、という気持ちになるのも理解できなくはありませんよね。どうせ私たちは「長期的に見れば死んでいる」わけだし。


カナダ、京都議定書から脱退表明 批准国で初 - MSN産経ニュース
で、予定通りカナダさんは離脱すると。
中国、カナダの京都議定書脱退批判 削減義務求める - MSN産経ニュース
そして中国さんは(半ばポジショントークとして)それを非難するわけです。いやぁ様式美です。


まぁこうした失敗が想定外で驚くべき衝撃をもって迎えられたかというとやっぱりそうではないわけで。かつてのCOP15の時を頂点とした温暖化対策への『過熱した』ブームは既に終焉を迎えてしまった。あの時にできなかったものが、今になってできるわけがない、というのは当然の結果なんでしょう。
途上国とされる、中国やブラジルやインドなど、を無視するにはもう大きくなりすぎてしまったのです。
そうやって途上国と先進国を分けてやるにはもう遅すぎるんですよね。もっと昔――せめて10年くらい前であれば、できたかもしれない合意がもう今じゃ全く不可能になってしまっている。実際、1997年の京都議定書はそうやって、半ば無理やりに実現されたものでしたが、しかし今ではもう通用しない。陳腐化してしまった京都議定書システム。


さて置き、この構図において真にどうしようもないなぁと諦観に陥ってしまう点は、先進国と途上国(とされていた国)における「縮まっていく両者のパワー」によって客観的な両者の立場は近づいているとも言えるんだけど、しかし両者の『意識』はむしろ乖離していく、という点にあると思うんです。
私たち先進国が最早彼らも義務を背負うべきだと言う一方で、しかし中国をはじめとする勃興する国家たちの方は過去の歴史などを引き合いにしてむしろより頑なになっていく。彼らは弱かった時代よりもずっと多くの譲歩を求めるようになるのです。それは彼らにとって当然の権利でもあるわけだから。そうして両者の意識の相違は、明確に差があった時代よりも、ずっと広がっていく。そりゃ合意なんてできるはずもありませんよね。


いや南北問題ってほんとうにこわいですよね。