いったいなんでこんなことになってしまったのかinグローバル経済

年末ですし昨日に引き続き微妙に総論日記。


TPPアメリカの本音と思惑 | ビジネス | 最新記事 | ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト
前半部分の「アメリカでTPPの影が薄い理由のもう1つは、通商協定そのものが一般的に不人気だという点にある」については以前書いたので割愛。
アメリカが二百年以上議論を続ける自由貿易への妄執 - maukitiの日記
まぁ国民に不人気どころか自由貿易をめぐって内戦までいってしまう国家は他にありませんよね。アメリカこわい。

おそらく中国を念頭に、クリントンは「開放性と自由と透明性と公正さ」を備えた仕組みの重要性を指摘。また、この地域で領土紛争の当事国になっておらず、過去60年にわたり地域の安定に尽くしてきた唯一の大国として、アメリカが大きな役割を果たせると主張している。

TPPは、オバマ政権のアジア戦略の経済面と安全保障面が交差する政策テーマだ。アメリカは通常の通商協定で満足せず、もっと広範なルールを作ろうとしているように見える。「WTO世界貿易機関)2・0」とでも呼ぶべき本格的な仕組みを目指しているのかもしれない。

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ともあれ本題。「TPPはそれこそ新たな世界における『新しい枠組み』の基礎となるかもしれない」というアメリカに大望について。
実際そういう面もあるのでしょう。今のWTOにしても以前のGATTから発展解消させて誕生したわけだし、世界の構造そのものが変わるならば同様にそこで運用する経済へのルールも変更されていくのは当然の話ではありますよね。大恐慌以前の自由放任の時代から、第二次大戦後の冷戦構造の時代(ブレトウッズ及びGATT)、そして冷戦以後のアメリカ一極の時代(WTO)、そして来るべきアメリカ一極時代の終わり(WTO2.0?)へと。


さて置き、そもそも論で言えば、自由貿易やグローバル経済って国際(経済)関係が『平和』であるからこそ、成立しているわけですよね。国際的に平和になったからこそ、そうしたグローバル化が進んだ*1。そうした気運が特に盛り上がったのが第一次大戦前の1900年前後と、そして冷戦後の1990年代以降だったというのはやっぱりそういうことでもあるのでしょうし。
その意味で、その次にやってくるものの嚆矢となる(かもしれない)協定がかなりの面まで『対中国』という性格を持っているのは色々と考えさせられるものがあると思うんですよね。実際中国さんはまぁ色々と所謂『自由貿易体制』にとって騒動の種となるようなことをこれまでもやってきているわけで。
中国、レアアース規制強化 ハイブリッド用磁石向けを厳重管理 :日本経済新聞
米下院が対中制裁法案を可決、人民元安に相殺関税 写真1枚 国際ニュース:AFPBB News
つまり、中国がターゲットというよりはむしろ、中国に如何に邪魔をされない仕組みを作るか、という点にあるのでしょう。前述したように、少なくとも今あるグローバル経済とは国際的に「敵がいないからこそ」成立するのだから。故に既存ルールの延長を目指すアメリカとしては、リンク先にあるような「WTO世界貿易機関)2・0」なんて案が浮上してくる。


アメリカ黄金時代の終わり - maukitiの日記
上記日記でも書きましたけど、やっぱり現在の――特に冷戦以後に盛り上がったグローバル経済って、アメリカの一極状態であることこそがその存在の担保ともなっていたと思うんですよね。同時にだからこそ「アメリカ化の押し付け」だなんて批判されまくってもいたと。
そして現在になって、様々な人から指摘されているようにアメリカそのものの影響力が衰退していっている。ということは同時にそうした既存のグローバル経済の仕組みそのものも崩れつつあるのかなぁと。一極状態から多極状態へ。それは政治の世界地図を塗り替えるように、経済の世界地図も塗り替えることになるのだと。
そんな次の経済の枠組みが一体どうなってしまうのかなんて私にはとても解りませんので、とりあえずは世界が平和でありますようにと祈っておきます。

*1:しかしその「経済的相互依存」と「平和」という因果関係は決して逆の論理を導いたりはしない。平和だから経済的相互依存の関係が成立するのであって、経済的に相互依存しているからといって平和が生まれるわけではないのです。この微妙な因果関係こそがトマス・ペインさんやJ・S・ミルさんや、そして有名なノーマン・エンジェルさんのあまりにもタイミングの良過ぎる『大いなる幻影』のような「経済的合理性が戦争を遠ざける」なんて勘違いを生む土壌となってしまったのかなぁと。