ドイツさんちの電力事情

昨日の友は今日の敵、なお話。


http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/34860
ということで先行者の苦戦であります。しかし是非ともこれからもがんばって一部日本の人びとが夢見る先進工業国における脱原発社会を実現の可能性を提示してもらいたいものですよね。やっぱり無理して先頭を走らなくても、成功者の真似で済むならばそれにこしたことはないわけだし。もし失敗したら……、うん、まぁ、おつかれさまでした、とでも言って撤収すればいいんじゃないでしょうか。

欧州各地で「計画停電」の恐れも

 2月初旬には、全国規模の停電に対する各社の懸念が欧州レベルにまで膨らんだ。フランスでの価格上昇を受け、折しも寒波がロシアからの天然ガス供給を滞らせた時に、エネルギー商社がドイツの電力を大量に輸出したためだ。

 従来であれば、送電網を運営する事業者は、原発事業者に発電量を増やすよう要請していた。だが、総計20GWのうち8GW分の設備が閉鎖された今、これは選択肢にはならなかった。結局、各社は約10日間にわたり、ドイツ南西部とオーストリアにある古い予備のガス火力発電所を利用した。

 「我々にはもう、危機時に対策を講じる余地を与えてくれる予備設備がない」とヴァインライヒ氏は言う。「もし大規模な発電所を失っていたらどうなるか?」 そうなれば、欧州全土の特定地域で電気を消す「計画停電」を余儀なくされるという。

http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/34860

そんなドイツさんちの苦戦自体は結構前から言われていたお話でもありますよね。
しかしこの記事で言われているように、今回のドイツさんちの苦労話で面白いのは、他国との供給網があるからこそ『脱原発』という方向に舵を切れたドイツさんちが、実はそのおかげで他国の負担が増している、というとても救えないお話な所かなぁと。それこそ欧州各地にまで被害が広がろうとしている。かくして「そのおかげで」進めることができていたはずが、しかし「そのおかげで」逆に周辺国からの圧力でそれ以上前に進めなくなっているドイツさんち。


昨日(三月二八日)の読売新聞本紙の方では、ちょうど去年の今頃に「福島は制御不能」なんて放言*1で有名になった欧州委員会のエネルギー担当であるエッティンガーさんが欧州連合内での協調について苦言を呈した、と載せています。

「エネルギー転換は電気網が他国と繋がっているからこそ可能。他国はドイツが相談なしに転換を進めることを懸念している」

脱原発の立役者となったその欧州全体の送電網は、しかし見事にドイツによる電気吸い上げ装置になってしまっている現状。そりゃあ文句の一つも言いたくなってしまいますよね。まぁこの方ドイツの人なんですけど。
構図としては、みんなで担いでいた御輿はその内の一人は手を抜くこともできるけど実際にやったらそりゃ他の人に余計に負担がいくだけですよね、という身も蓋もないお話辺りでしょうか。
勿論そのための対応――あと数年という単位ではまったく間に合っていませんけど――上記リンク先で言及されてもいるように、火力発電所や高圧送電線網などの増設の努力によって埋め合わせしようとがんばっているそうです。しかしそれさえも「でもお金が掛かるし……」と中々進まない現状。
これまでの『脱原発』という現状維持は他国からの不満を招き、しかし先に進むには経済的合理性の壁が立ち塞がっているドイツさんちでありました。まぁ他人事としては楽しく見てられますよね。わが国としてはもう脱原発モラトリアムへと着々と外堀が埋まりつつあるわけですけど。
ともあれ、ドイツの世界一の科学力で是非ともがんばってください。