『政治的正当性』をめぐる不毛なゼロサムゲーム

経済的手法なお話はともかくとして、政治的には必ず誰かが負ける状況にまで結局行き着いてしまったなぁと。皆が幸せになれれば良かったのにね。


ギリシャ離脱の可能性検討し始めたユーロ圏、14日財務相会合 - Bloomberg
焦点:ギリシャのユーロ離脱現実味、金融機関が「ドラクマ復活」の備え| Reuters
ということで連立の可能性が消え再選挙の見通しが高まってきた――再選挙したらほぼ確実に反緊縮派が大勝してしまう――ギリシャさんちです。そしてそんなギリシャの人びとを目の当たりにしてここに至りようやく、ついに愛想を尽かしたのか、あるいはやっと目が覚めたのか、「ギリシャのユーロ離脱」が現実的なものとして語られるようになってきたヨーロッパの中の人たちであるのでした。
端から見ている私たちからすると「今更そこかよ」という見方は勿論できるのですけども、それだけ彼らにとってのユーロという構想にとって大きな決断だかこそ、という面はやっぱりあるのでしょう。これまでの労力と投資をなかなか諦められない人たち。
ぶっちゃけ最近日本で話題になっているガチャガチャに嵌まる人たちそっくりなのは苦笑いするしかありませんよね。コンプ前に諦めてしまったらこれまで突っ込んできたお金はどうなってしまうのか。統合の道半ばでユーロを諦めてしまったら今までの苦労とは一体なんだったのか、なんて。


http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/35198
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/35196
ともあれ、上記ギリシャさんと相克を続ける周辺国の皆さん――エコノミストさんやFTさんが揃って似たようなことを仰っているポジションも理解できないお話ではないんです。勿論それは彼らのポジションを多分に反映したものではありますけど、しかしユーロ通貨ひいては欧州連合そのものを今後も(現在の枠組みの中で)維持する為に必要なことの一つではあるのでしょうし。
ギリシャに緊縮策実施迫る ユーロ圏が財務相会合 - 47NEWS(よんななニュース)
かくしてギリシャ以外の彼らは現状維持を望み、しかしギリシャの国民の皆様は現状打破を望んでいる、と。
まぁここまで状況が煮詰まってしまうと最早どちらも負けた場合に失うものが大き過ぎてどうしようもない、という感じになってしまっていますよね。意地の張り合いというか、チキンゲームというか。どちらかの勝利は必ずどちらかの敗北を招いてしまう。勿論緊縮は(あるいは反緊縮は)長期的に見れば良い結果に繋がるはずだ、とヌルいことを言うことは可能ではあります。ただ現実問題として今この瞬間に直面している、彼らの対立点である「緊縮か反緊縮か」がお互いのその主張のどちらか一方が退けられた場合の被害についてはもう……。
このままいくと負けた方は必ず致命的なダメージを負ってしまう。もし前者であればとにもかくにもユーロ諸国全体で合意したはずの約束が一方的に無視されることになってしまうし、後者であれば他ならぬ国民選挙によって選ばれた声が無視されてしまう。勝った方が負けた方の政治的意思を殺してしまう、そんな二者択一のゼロサムゲームに陥っている人たち。


ほんともう一体なんでこんなところにまで到達してしまったんでしょうね、という気持ちでいっぱいであります。超国家体制であるユーロの意思決定と、古きよき国家主権の意思決定の対立について。それを真正面からぶつけあったらこうなってしまうのは当然のお話じゃないですか。だからこそ、この『国家主権の取り扱い』という古くて新しい問題について欧州連合はそれなりに細心の注意を払ってやってきたはずだったのに。
そんな民主主義対民主主義の戦いについて。お互いが戦えばどちらにしても負けた方のそれは致命的に傷ついてしまうというのに。こうして修羅の道に足を踏み入れかけているヨーロッパの皆様。
がんばれユーロ。