『皆保険制度』というグローバル化を避けられないアメリカ

世界中で起きてきた衝突はアメリカさん自身も例外ではなかったのだと。


米最高裁、医療保険改革法に合憲判断 オバマ大統領再選に追い風 写真6枚 国際ニュース:AFPBB News
ということで、オバマさんの象徴たる医療保険改革法案『オバマケア』は合憲との見通しがたったそうで。いやぁよかったですね。
勝つにしろ負けるにしろ僅差の結果が予想されていましたけど、しかしまぁ身も蓋もない言い方をすれば「司法が議会(行政と立法)の重要な最高決定をあっさり覆すことの難しさ」「影響の大きさ」を考えたらこうなってしまうのも無理はないかなぁとは思ってしまいます。三権のうちただ司法だけが反旗を翻す。エジプトじゃあるまいし、アメリカでそんなことを出来るわけもなかろう、と日和っちゃったんじゃないのかと。


そもそもこうしたアメリカ国内での改革の歩みは今日のオバマさんでいきなり進んだ、という話ではないんですよね。前回のブッシュさんの時だって前々回のクリントンさんの時だって、アメリカにおける医療保険制度の議論や改革は少しずつ進んできたのです。でも彼らは潜在的な支持があると知りながらも、しかし同時に今回のような決定的な反発もあることもやっぱり知っていたので、ダラダラとした歩みを続けていたのでした。
それをオバマさんが打破したと。その意味では彼はやっぱりすごいなぁとは思います。外交政策の分野でもそうでしたけど「チェンジ!」の一つの成果――その是非はともかく――といってもいいんじゃないでしょうか。政権交代の意味があってうらやましいですよね。うちなんて以下略。


ただまぁ色々指摘されてはいますけど、それでも現状の国民の支持率としてはぶっちゃけ不支持の方がまだ比率は高いんですよね。

最高裁の判決は、違憲判断を望んでいたロムニー陣営や共和党議員にとって痛手となった。

だが、24日に公表されたロイター/イプソスの世論調査によると、米国民の大半は同法の内容を総じて強く支持しているにもかかわらず、法律自体には反対しており、11月の大統領選では、今回の最高裁の判断が共和党への追い風になる可能性もある。

米共和党ロムニー氏、医療保険改革法の撤廃へ支援訴え| ワールド| 米国| Reuters

理念としてはもちろん賛成だがこの法案に関しては反対だ、なんて。最新の世論調査によると支持33%不支持47%だそうですよ。
それでも先進工業国でアメリカだけが皆保険制度をやらずにはいられなかった、というお話なのでしょう。
アメリカの特異性だから、という建前だけでは押し通せなくなってしまった。それこそグローバル化の名の下にシステムや文化の改革を余儀なくされてきた世界中の国々と同様に、アメリカだってその影響を無視できるわけなかったのだと。この長年続くアメリカの医療保険改革の問題に関しては、グローバル化の波に徐々に押し流されるアメリカさんという感じで個人的には見てて面白いです。
「それは私たち独自の文化であり伝統なのだ。ほっといてくれ」「うるせーそんなこと知ったこっちゃねぇ」
かくしてそれまで自分が周囲にやってきたように、世界のスタンダードに合わせざるを得なくなったアメリカ。まぁ当然の帰結ではありますよね。


それまでの構図を見るとやっぱり皮肉なお話ではあるなぁと。