アメリカの逆ソフトパワー

何もしなくても嫌われる程度の能力について。


パキスタンがISAF補給路を再開へ、米側の誤爆謝罪を受け| ワールド| Reuters
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ということでアメリカさんがパキスタンさんに「誤爆ゴメン」したそうです。まぁようやく落ち着く所に落ち着いたというお話でしょうか。


しかしまぁ別に今回の件に限った話ではなくて、多分に今更ではあるんですけども、アメリカさんちの嫌われっぷりはやっぱりオバマさんの「チェンジ!」でもどうしようもなかったなぁと。別にアメリカの直接的な影響力が(決定的に)低下したというわけではないのにも関わらず、しかし無数の『構造的反米論者』の皆様のようにそれだけで不倶戴天の敵として認識されてしまう。
こうした構図があまりにも一般化しすぎて、むしろ反米のポーズは国内支持の安定要因ともなっているんですよね。そして逆に親米路線を打ち出すことはほとんど全ての国で政権支持率の低下を招いてしまう。経済や外交政策や安全保障とかそういう直接の問題ではなく、ただ国民支持が得られる万能薬だからこそ、多くの国ではそうしたポーズを取ることになっていく。見事な逆ソフトパワーであります。
今回のパキスタンにしても多分にそういう面があったりするわけで。それはアラブ諸国などでは顕著であるし、ヨーロッパや南米やアジアなど、ほとんど世界中で共通のトレンドでもあるのでした。私たちの前々回の首相にしても似たようなことやってましたよね。そしてそのポーズに私たちは無邪気に迎合してしまった。


こうした流れが決定的になったのはやっぱりブッシュさんのイラク戦争以来であるのでしょう。イラク戦争に賛成したからこそ、国内支持を失ってしまう政治指導者たち。
そんな風景を見ていればそりゃ誰だって、本心はともかく、反米のポーズを取ってしまうのも理解できます。特にイギリスのブレアさんなんてそのアメリカ追従が政権を失った最大の要因と言われていたりするのでした。ちなみに我ら日本の当時の小泉さんはイラク戦争に積極的に賛成したにも関わらず、その悪影響をほぼ無傷で切り抜けたという、世界的にも稀有な政治家だったのでした。北朝鮮さまさまです。

ソフト・パワー(Soft Power)とは、国家が軍事力や経済力などの対外的な強制力によらず、その国の有する文化や政治的価値観、政策の魅力などに対する支持や理解、共感を得ることにより、国際社会からの信頼や、発言力を獲得し得る力のことである。対義語はハード・パワー。

ソフト・パワー - Wikipedia

かくしてナイ教授が訴えたアメリカのソフトパワーは見事に――本来の意図とは全く逆の意味で――効果を発揮してしまっている。
直接にハードパワーを行使しなくても発言力や影響力を確保できるはずが、しかしそれとは全く逆に悪影響ばっかりなアメリカさんちのソフトパワーについて。まぁそれもある種のソフトパワーの一環ではありますよね。ネガティブかポジティブかという違いでしかないのだ。ただちょっとベクトルが真逆にいっちゃっただけなんだ。
ソフトパワー云々というよりも、ただひたすらに「嫌われ者は辛いよね」と言ってしまっては身も蓋もありませんけど。