雨降って地固まらず

当事者の皆様としては絶対に認めるわけにはいかないお話ではあります。


ノルウェー爆破・銃乱射事件から1年、首相「ブレイビク被告は失敗した」 写真5枚 国際ニュース:AFPBB News
まぁ追悼式典という場での多分にポジショントークなお話で、他に言い様がないといっては身も蓋もありませんけども。構図的にはアメリカの大統領が9・11テロでの追悼で「我々は負けていない」と言うのと近いですよね。そりゃみんな立場上そう言うしかないだろうなぁと。


ともあれ、やっぱり彼のあの『2083』計画のようなものはギャグとしても、しかしまぁ社会に色々と一石を投じてしまったのは間違いないのでしょう。戦いの勝敗はともかくとしても、しかしあの事件によって戦いは決定的に社会の表層に出てきてしまった。
Breivik's toxic legacy | Aslak Sira Myhre | Opinion | The Guardian
少し前のガーディアンさんが『ブレイビクの負の遺産』というまんまな記事を載せていらっしゃいましたけど、事件直後はともかく、こうして時間がたった今では反イスラム・反移民な人たちは以前より大きな声を上げるようになっている、と現状を書いています。結果としてブレイビクさんは――狙ったのか偶々なのかは解りませんけど――そうした潜在的同調者を掴むことに成功してしまった。もちろん彼らは「俺たちは彼とは違う」とエクスキューズをするのを忘れませんけども。
あの事件によって人びとがお互いが手を取り合って、なんてことは当然なくて、むしろその対立構造は固定化し硬直化してしまったのでした。

After the attack, prime minister Stoltenberg stated that Norway's response would be more democracy and more openness. Politicians of all parties joined him in a declaration that the elections last September would be the nation's answer to the terror. People should turn up and vote to defend democracy. But the count showed no significant growth in turnout.
(攻撃の後、ストルテンベルグ首相はノルウェーはより開かれた民主主義と寛容でそれに応えるだろうと述べ、そしてそれに多くの政治家たちも次の選挙(昨年九月)こそが攻撃への答えになるだろうと賛同した。人びとは民主主義を守る為に投票しよう、と。しかしその投票率にほとんど上昇は見られなかった)

Breivik's toxic legacy | Aslak Sira Myhre | Opinion | The Guardian

事件直後のあのかっこいい発言「より開かれた民主主義と寛容さで応える」にしても空回っていたそうで。これを以って国民は「勝利した」というべきなのか、むしろ「無かったことにした」というべきなのか、悩んでしまいますよね。


しかしまぁそれも9・11をうまく乗り越えられなかったアメリカさんちのことを考えると、ノルウェーさんちもそこまで事情は変わらないのだなぁと。結局どこの国でも、そうしたテロによってピンチをチャンスに変えると息巻いてみるけれど、しかしやっぱりその連鎖は負の方へと傾いてしまうという悲しいオチ。