オバマさんの成功体験に支配される共和党

結果的に、共和党内におけるティーパーティのような真性保守な人たちを蘇らせたのがオバマさんの成功だった、という皮肉なお話。


ブッシュ徹底排除、共和党員の複雑な本音 | アメリカ | 最新記事 | ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト
多分に「オバマ政権へのカウンターとして」という面はあるものの、しかしこの時代になって小さな政府という『原点』へと回帰しようとする共和党としては、ブッシュ路線を排除するのはまぁある種当然の帰結ではあるんですよね。だって前回のブッシュさんもやっぱり結構な中道派だったわけで。そりゃ共和党としては(実態はともかくとして)原点回帰を謳おうとする以上、そんなブッシュさんを『封印』するのも仕方ないかなぁと。

大統領候補を指名する共和党大会で、ブッシュ前大統領の登場はビデオ映像だけ。前政権の8年間を「封印」する戦略には批判的な声も

ブッシュ徹底排除、共和党員の複雑な本音 | アメリカ | 最新記事 | ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト]

民主党共和党の二極化が著しいと言われる昨今のアメリカでありますけども、しかしその流れってかなり新しいものではあるんですよね。むしろ以前までは二大政党制が避けられないもう一つの宿痾である「両者の経済政策がまったく似てしまう」ということこそが大きな声で叫ばれてもいたわけで。
そうした流れはレーガン政権以後の父ブッシュさんの時代からかなり言われるようになっていて、彼のかなりリベラルに寄った中道保守(「優しいアメリカ」)のやり方は、その次のクリントンさんの共和党的なニューデモクラット(「新しい民主党」)との争いを経て、父のそれを継承した小ブッシュさんの社会福祉を重視した「温かみ・思いやりのある保守主義」という中道的な政策論争は大統領選挙まで続いていたのです。9・11の騒動で全て吹っ飛んでしまいましたけど、実際前回のブッシュさんって元々かなり政策としてはリベラルだったんですよね。


共和党民主党の政策寄りに、そして民主党共和党の政策寄りへ。まぁお互いに中間層の有権者を取り込もうとするならば当然の帰結ですよね。だからこそ民主党共和党の政策の類似性をして、その両社の党派性を逆に皮肉って「ペプシとコカコーラを較べるようなものだ」なんて揶揄されてもいたのでした。


しかしオバマさんがそうした空気を一気に塗り替えてしまった。まさに彼はそうした中道派合戦を「チェンジ!」してしまったのです。
ペプシだかコカコーラだかマニア以外に違いが解らないモノではなく、より解りやすい政治を提供することで、彼は一大旋風を(そして決定的な党派対立を)生み出すことに成功したと。もちろんオバマさんだけのせいで現状の不毛な党派対立が生まれたというのはフェアではなくて、その背景にあるのは両者が本質として「似てしまったからこそ」むしろそこでは別の点で差異を証明しようと逆に些細な点での争いが激しくなっていった、という点があります。彼らは似ているからこそお互いを激しく憎むことでそのアイデンティティを証明しようとした。その代表例がクリントン政権時代のギングリッチさんがやってみせた非妥協的な議会運営でありました。
本質の政策としては似ているくせに、(些細な)不毛な争いばかりにかまけてしまう両党の有り様について。そりゃアメリカの有権者も色々絶望してしまいますよね。そんな空気の所へ2008年にオバマさんという救世主が鮮やかに登場し、あとは以下略。


かくして民主党に続いて、共和党もそのバス(過激な政策主張)に遅ればせながら乗ることに決めたのだと個人的には思っています。中道的な政策ではなく極端なことを言うからこそ、多少の支持の切り捨ては容認しても、多くの有権者のハートを掴む事が出来るのだ。まさにそれで大勝利してみせたオバマさんの例にあやかって。そしてだからこそ今回の共和党大会はこんなことになっているのだと。
それでもまぁその代表があのロムニーさんだというのは、元々『真性保守』な人が実際にそれを演じて見せるよりはまだ安心感があるのかなぁと。中身も外見もどちらもアレだったら困ってしまうじゃないですか。少なくともロムニーさんなら豹変してしまうこともありえそうだし。


ともあれ、問題はこのアメリカ政治における不毛な党派対立の流れがいつまで続くのか、という所なのでしょう。個人的にはまだ以前の構図の方がマシだとは思うんですけども、しかしそれではアメリカの一部有権者の人たちは満足しないのだろうし。だからといって、これまでのような末節ではない根本的なイデオロギー対立となると、もう一つの二大政党制の罠に嵌ってしまって将来的にロクでもないことになってしまうのは明白であります。
がんばれアメリカ。