「正しい戦争だからセーフ」と考えたブッシュさんと、「戦争じゃないからセーフ」と考えているオバマさん

ブッシュドクトリンからオバマドクトリンへ。それを進歩と呼ぶべきか否か。


米同時多発テロ:NYのWTC跡地で追悼式典行われる− 毎日jp(毎日新聞)
ということであれから11年であります。やっぱり十周年も過ぎて11年目になるとやっぱりもう結構な風化が進んでいるんだろうなぁと。
それでもやっぱり「あの大惨事を繰り返さないこと」こそが現状のアメリカ大統領の最優先課題の一つとなっている状況は、端的に言って今尚続く『ビンラディンの呪い』とでも言うべきなのかもしれません。もちろん結果的に彼はああして暗殺されることでそのツケを払ったわけですけども、しかし一方で、これまでの11年間――そしておそらくこれから何年も――にわたって膨大なリソースの浪費を強いることに成功したとも言えますよね。まぁぶっちゃけ当事者たちのどちらも誰も得をしていないというよくあるお話だと言ってしまっては身も蓋もありませんけども。


ともあれ本題。
前任者のブッシュさんのそれといえば有名な「テロリストとそれを匿う国は容赦しない」というものでした。彼はそうして先制攻撃をも辞さない不退転の覚悟を示すことでテロリストの殲滅の踏み絵を迫ったわけです。ところがまぁそれを聞いた多くの人が考えたように、やっぱりそれはそこまで上手いやり方ではなかったんですよね。そんな『戦争』をも射程に入れた原理的なやり方は結局のところ、敵どころか同盟国をも含めて、他国との摩擦を激しくするだけだったわけです。
かくしてその後任となったオバマさんは9・11の再来を防ぐ為に、そんな「効率的でない」やり方を一転させることにしました。つまり、そもそも「テロリストを匿う国へ圧力を掛けて〜」なんてまどろっこしい真似をするくらいなら――彼に言わせるとそんな「防衛的なやり方」をするくらいなら、もっと直接的に無人機や秘密作戦によってテロリストをぶっ殺した方が早いではないか、という至極もっともな結論にたどり着いているのです。
ブッシュさんは『戦争』をやろうとして失敗したのに対して、逆にオバマさんは『戦争』にすらしていない。より問答無用で手っ取り早く現実的で効率的な手法へ。
ブッシュドクトリンからオバマドクトリンという戦略転換。それってまぁある意味では確かに正当進化なんだろうなぁと個人的には感心してしまいます。まともに戦おうとするからバカを見るのであって、そもそも戦争をする必要さえないと考えている人たち。おそらくそれは「正義と信仰の人」だったブッシュさんには到底たどり着くことのできなかったポジションでしょう。ブッシュさんではなく、オバマさんだからこそたどり着く事ができた地平。


実際それは前任者の教訓から正しく学んだ戦略だと言う事はできるんです。あのアフガニスタンイラクの大失敗によって、オバマさんは伝統的な戦争未満の場所に解決策を見出している。戦争してダメなら、無人機と秘密作戦で暗殺しちゃえばいいじゃない。マリーさんもびっくりの解決方法。
「正しい戦争だからセーフ」と考えたブッシュさんと、「戦争じゃないからセーフ」と考えているオバマさん。少なくとも現時点の結果だけを見れば後者の方がまだ問題は少ないように見えますよね。まぁそんな他国の領土であろうとお構いなしの爆殺祭りが将来的にどう影響するのかまでは解りませんけども。


両者の根本にあるものはやっぱり同じものであるのです。9・11を二度と起こさない為にこそ、文字通り手段など選んでいられないアメリカ大統領たち。いやぁそんな両者のうちどっちがマシなのかと聞かれるとぶっちゃけ困ってしまいますよね。
みなさんはいかがお考えでしょうか?