ソーシャル革命からソーシャル反米へ

「乗るしかないでしょうこのビッグウェーブに!」再び。


炎上する領事館内に取り残された駐リビア米国大使、死の真相は 写真6枚 国際ニュース:AFPBB News
チュニジア米大使館前でデモ、押し入ろうとし鎮圧される 写真7枚 国際ニュース:AFPBB News
イエメン・サヌアの米大使館にデモ隊押し入る 写真3枚 国際ニュース:AFPBB News
ということで大盛り上がりの帰ってきた『アラブの春』であります。しかしその原因がバカげた映画だなんて。『イノセンス・オブ・ムスリム』だそうですよ。日本語で「無邪気」とか訳されると伝わりにくいですけども、今日のトリビアとしては「あちらではInnocenceは侮蔑表現」という辺りで。なんかこれ前も同じこと書いた気がする。
まぁyoutube版ではどうやら意図的に(反イスラム的に)改悪されていたらしくて、元々毒にも薬にもならなかった自主制作レベルの映画が、一転して一躍世界中のムーブメントに。これ以上ないほどの見事すぎる炎上マーケティングであります。


前回の『アラブの春』で起きた潮流を――もちろん批判する人も多いですけども――「善き繋がり」とするならば、今回は見事にその反対の面が出てしまったという構図。「抗議の為に焼身自殺した青年」から「反イスラム映画」へと、その伝播する中身が変わっただけ。人びとの善意を一気に大規模につなげる事ができるのならば、悪意だって出来て当然だったというお話。
やっぱり両者は根本的に同じ場所にあるんですよね。「道具は道具でしかなく、いつだって人を救うのも殺すのも人なのだ」的なオチでしょうか。
だから前回のそれを賞賛しておいて今回のこれを批判・例外扱いするのは個人的にはあまりフェアではないかなぁと。それこそ前回の時に独裁者たちが口々に叫んだ「これは無秩序な暴動に過ぎない」という言葉を思い出さずにいられません。そして治安維持の為にアクセスを遮断する人びと。わーそっくりー。


さて置き、これで益々シリアの解決が遠のいたなぁと思うところではあります。反米とはいっても概ねオバマさんは一貫して『アラブの春』に同情的だったにもかかわらず、特にリビアの米大使館なんてあのリビアの内戦ではかなり大きな役割を果たしていたにも関わらず、このザマなわけで。まぁもちろんアメリカの長年の中東政策の失敗がこうした感情の下敷きになっていることもあるのでしょうけども、それだけで一気にここまで火がついてしまう理由には不十分じゃないでしょうか。
こんな事になるくらいなら――あのリビア程度の関与と貢献でさえこうなってしまうんだから、オバマさん辺りは更に「シリアには絶対関わらないようにしよう」という決意を固めているんじゃないかなぁと。