労使間のパワーバランスは崩壊しました

グローバル化こわい。


インドネシア:200万人スト…日系企業も操業停止− 毎日jp(毎日新聞)
インドネシアでゼネスト、200万人以上が参加見通し 賃上げ要求、過激化懸念 - MSN産経ニュース
インドネシアさんちは大騒動だったそうで。

 日系電機メーカーで派遣社員として働くデウィさん(20)は月収180万ルピア(約1万4700円)。「正社員より50万ルピアも少ない。食費と家賃で消えてしまう」と話した。中国系ガラス工場に勤務するハリディティオさん(31)は「成長の恩恵を受けているのは金持ちだけ」と語った。待遇改善に消極的な一部外国企業への反発も高まり、労組メンバーがマイクで「我々は中国や日本(企業)の奴隷として働かされている」と訴える場面もあった。

インドネシア:200万人スト…日系企業も操業停止− 毎日jp(毎日新聞)

まぁなんというか私たち日本人としては耳の痛いお話ではありますよね。しばしばiphoneのそれが揶揄されたりしていますけど、先進国にある安価で高機能な製品に囲まれる豊かな生活を支える――端的に言ってしまうと『奴隷労働』に近い何か。それはダイヤモンドは血の輝きだとか、コーヒー農園で酷使される人びとと較べてまぁ大差はないわけで。
こうした現在の労働者たちの苦境を産業革命の黎明期にあったそれと比較するお話はまぁ大変よく解るお話であります。そしてかつての人びとは労働組合を結成し、集団で立ち向かうことで資本の論理に対抗したのでした。


ところが、まぁ現在ではそうした対抗策はほぼ完全に陳腐化してしまっているんですよね。いくら労業組合の側ががんばってストライキしてみた所で、企業――特に外資企業にとっては「じゃあ代わりに別の所へ行こう」とやってしまえばいいんだから。素晴らしきグローバリズム。最早かつてそこにあったパワーバランスは崩壊してしまったのです。
まぁこんなことはスーザン・ストレンジ先生辺りが20年以上前から言っているお話でもあります。「多国籍企業は工場を外国に移転させられるが、労働者はよその国へ行けないという状況が、先進国の労働組合の力を奪ってきた」なんて。
その意味で、今回の外国企業に立ち向かうインドネシアの人々は、なんというか勝ち目の薄い悲愴な戦いに挑んでいますよね。労働者の側の皆さんとしては自分の責任と決断の上でやっている以上それでもいいんですけど、おそらくこの構図においてもっとも困惑しているのは、やっぱり「インドネシア政府」の中の人なんだろうなぁと生暖かい気持ちに。だって彼らにとっては労働者=国民が怒るのも困るけども、だからといって外国企業に出て行かれても同じように困ってしまうんだから。どちらにも完全に肩入れすることのできないジレンマ。


こうした構図を根本的にひっくり返すには世界中の人びとが同時にそんな強欲な外国企業へNOを突きつけるしかない。
しかし囚人のジレンマじゃありませんけど、誰もが全員同時にそんなことできるはずないんですよね。例え政府の規制によってある程度までの国では通用しても、しかしそうした国が増えれば増えるほど、やっぱり自分ひとりだけ裏切って「投資を得る」という選択肢には魅力がありすぎます。そもそも世の中には「民主的でない」国なんて結構幾らでもあるんだから。
ということでグローバルな資本主義社会が世界全体に浸透しつつある今だからこそ待望される世界同時革命。そんな完全な連帯がない私たちだからこそ、世界同時革命という連帯を欲してしまう。しかしそもそも連帯できていれば連帯なんて必要ないわけで。よって連帯できない以上革命もできるはずもない。いやぁ自分でも何を言っているのかわからなくなってきたぜ。助けてトロツキーせんせー。
インドネシア:ゼネスト沈静化へ「待遇改善速やかに実行」− 毎日jp(毎日新聞)
ともあれ、上記のように口先だけでも国が介入せざるを得なくったのは当然の帰結かなぁと。それでも、この辺は日本に生きる私たちも当事者として実感しているように、だからといって簡単に最低賃金だけ上げれば解決する問題なのかというとそうでもないのが難しいお話ではありますよね。それをやっても結局は企業には逃げ道があるものの、しかし労働者たちには逃げ場がない、という根本的な構図は何も変わっていないのだから。



がんばれインドネシア