「バカを止めるクスリ」はなくもない

しかしそれを自発的に使うかどうかはまた別問題なんですよね。


CNN.co.jp : 急進派がスフィンクスとピラミッドの「破壊」呼びかけ エジプト
海外面白ニュース扱いとして盛り上がってた非情に愉快なお話。ピラミッドを破壊せよ。えーと、うん、まぁ、なんというか、オメガバカ。おわり。でもそれだけじゃ寂しいので以下適当なお話。

発言の主はイスラム指導者のモーガン・ゴハリ氏。10日、エジプトの民間放送局ドリームTV2の番組に出演し、もし自分たちが実権を握れば、スフィンクスとピラミッドを躊躇なく破壊するだろうと語った。
同氏はまた、自分はアフガニスタンで2001年3月に、当時の支配勢力だったタリバーンとともにバーミヤンの大仏破壊に加わったとも公言している。

CNN.co.jp : 急進派がスフィンクスとピラミッドの「破壊」呼びかけ エジプト

まぁ前段では「オメガバカ」と括ってしまいましたけども、彼らは彼らなりに信じる所があるわけですのでそれを一概に否定するのもアレではあります。マジレスとしては(イスラム法に厳密に従えば「偶像崇拝はすべて禁止されるべき」なので)「政府管理のモノは、政府の役割として、当然不要なゴミは片付けるべきである」という辺りになるのでしょうか。ノリとしては「今後赤信号で渡った奴は全員即刻逮捕だ!」なお話に近いかもしれない。


ともあれ、こうしたイスラム教の人びとによる面白ニュースが話題になるたびに、少なくない人たちが「一神教はこれだから」とか「イスラム教はこれだから」という声が上がってしまうわけです。でもまぁそんなバカな人たちはいつでもどこでもいらっしゃるわけで。実際アメリカにもコーラン焼却で名を馳せた牧師の方がいらっしゃいましたよね*1。大多数の私たちはそれを知識としても経験としても知っているはずなんですよ。手強い敵はウジャウジャいるぞ、ここにも、そこにも、あそこにも!*2
だからこそ「バカにつけるクスリはない」なんて言われるのです。


ということで社会の仕組みとして重要なのは「如何にしてバカを止めるか(暴走させないか)」が焦点となるわけです。そしてそのメインテーマとしては、バカな個人のそれよりもずっと、バカな権力者たちの暴走を如何にして抑制するか、ということが目指されているのであります。まぁその手法の一部には「個人の権利を強く守ることで結果的にバカな権力者を抑止する」というやり方が含まれているので、上記コーラン焼却のようにバカな個人に対して打つ手なし、という愉快なジレンマにも陥ってしまうんですが。でもまぁバカな権力者をのさばらせるよりはずっとマシだよね。
その意味において、現代世界の主流でもある『民主主義政治』というのはバカな権力者たちを抑止するという点でとても優れたやり方だ、と言うのには同意するしかありません。近代以降、私たちはチェック&バランスによって政治権力を分立均衡させ、更にそれぞれがきちんと機能しているかを私たち市民自身で監視し説明責任を要求することでそれを実現させている。まさに「バカを止めるクスリ」として。
昨日の日記コメントでも書いたようにやっぱり副作用もあるんですけど、でも全くやらないよりはずっとマシだから。



――で、翻って今回の革命後のエジプトでそれがなされているのかというと……うん、まぁ、ノーコメントで。
個人的見解としては、まぁ別にイスラム国家設立だのなんだのは好きにすれば良いと思うんです。ただ、今回のように『イスラム指導者』という事実上の権力者の暴走を防ぐ仕組みが国家として用意できるのかというと、やっぱりその辺の実現はどうなのだろうなぁと。それこそ新旧キリスト教が通った道のように「絶対に政教分離しろ!」とまでは言いませんけど、しかしそのブレーキ役をまったく用意せずにその理想郷を目指そうとするやり方は、正直あまり賛成できないわけで。実際その辺りの先駆者たるイランさんなんかもやっぱり長年苦労していますよね。
もちろん彼らの全てがバカで暴走するなんて事は当然ないでしょう。しかしその一方で、その全てが絶対に間違いを犯さないなんてことも言えるわけがない。
ではその万が一の時、一体誰が彼らの暴走を抑止するのか?


今回のエジプトのお話って結局そういうことを突きつけているのかなぁと思ったりします。みなさんはいかがお考えでしょうか?