あの日見た夢の残滓を僕達はまだ忘れられない

win-winな男女不平等社会。


朝日新聞デジタル:「夫は外、妻は家庭」初の増加 20代顕著、内閣府調査 - 社会
少し前の話題。というかちょうど先日の選挙真っ盛りの頃で、後回しにして放置していたネタを発掘。2009年から決定的に反転した男女共同参画社会に関する意識について。
まぁ個人的にも別に不思議な話ではないよなぁと。一般的に(自分に十分な収入があるという前提の上で)男性側の方はともかくとして、しかし女性の側もやっぱり『専業主婦』という存在はステータスであるという認識はそこそこ根強いわけで。婚活ブームが意味するもの。そりゃ当然の帰結としてこうなってしまいますよね。
田原総一朗×勝間和代×安藤美冬 「メディア化する個人のジレンマ」 第4回「有名になりたい人と有名になりたくない人」(田原 総一朗) | 現代ビジネス | 講談社(1/9)
この辺の内心を見事に看破しているなぁと思ったのが上記勝間さんのお話。

勝間: まさしくそこが問題で、そういう「3号被保険者制度」というのは、年金にしろ税制控除にしろすごく金持ち優遇になっているからやめろ、という話を私たちはずっと言っているんですよ。

田原: 誰が反対しているの?

勝間: そういうことをやろうとすると、票を失うから政治家は嫌がるんです。主婦層や保守層の票とか、そういうことをやると家族を解体するというふうに言って。

田原: そうすると、主婦層は実は本心のところでは男女共同参画社会なんて反対なんだ?

勝間: 実際そうだと思います。今のほうが楽だし法的にものすごく保護されているんですから。

田原: この対談は放送されているんだよね。NHKはぜひこの部分を放送してよね(笑)。つまり、実は日本の主婦層のほとんどは男女共同参画社会には反対なんだということだね。

田原総一朗×勝間和代×安藤美冬 「メディア化する個人のジレンマ」 第4回「有名になりたい人と有名になりたくない人」(田原 総一朗) | 現代ビジネス | 講談社(1/9)

そして男性の側もやっぱり「雇用が奪われる」という点からそれに反対すると。いやぁ素晴らしきwin-winの関係ですよね。
でもまぁ本場イギリス辺りでの20世紀初頭の女性選挙権拡大運動の頃なんかも似たような構図だったので、毎度のパターンと言えばその通りなのかもしれません。いつだってそうした「男女平等」な社会へ反対するのは、大多数の男性たちだけではなく、そこには多くの善意の女性たちも含まれるのだと。



さて置き。こうした結果が出るのも、つまりそうした「男は外、女は内」という価値観が、少なくない(過半数の)日本人にとってある種の「遥か遠き理想郷」だからこそ、という面もあるのだろうなぁと。最早『専業主婦』といったモノは失われた幻想ではあるんだけど、しかしだからこそ――それが僅かでも実現できていたあの頃を懐かしく、そして羨ましく思ってしまう。
その辺りによって「男女共同参画社会に関する世論調査」なんていう本来の視点からは、半ば意図せずに、かけ離れた解答が出てしまっているんじゃないかと。男女平等への意識ではなく、むしろあの時代への懐古感が出てしまっている。今はそうではないと実感として持った上で、「夫は外、妻は家庭(が実現できていた社会)」は素晴らしかったなぁ、なんて。


あの時代に見た夢の残滓を僕達はまだ忘れられない。