眩しすぎたオバマさんに落ちる深い影

現代アメリカ分断の象徴、あるいはその根源たるもの。



米議会よりゴキブリのほうがまし、世論調査 写真1枚 国際ニュース:AFPBB News
ということで少し出遅れましたけども、アメリカさんちの政治不信のお話。いやぁゴキブリ以下だなんてよっぽどですよね。
もちろん私たち日本でも根強くあったりするものですが、しかし典型的な人工国家たる彼らにとってはその『政治不信』という流れは日本のそれとは全く違う次元で、重要な意味を持っていたりするわけです。政治への信頼に疑義が生まれてしまうと、国家の統一そのものへの疑義までも生じてしまいかねない。
構成員たちがその連邦政府を一緒になって掲げることで「一つの国家である」と認識している。ではその連邦政府を信用できなくなったら?


まぁこうしたアメリカの政治不信はやっぱり今に始まったことではないんですよね。それこそ一つの解りやすいターニングポイントとしては、やっぱりあの『ウォーターゲート事件』があったりするのでしょう。未だにあちらでは重大な政治事件や疑獄があったりすると、「なんちゃらゲートだ!」なんて批判したりするように。
もう大統領には絶対の信頼がおけない。
――でもそれだけならまだ良かったんですよ。
その後のコントラ事件や、そしてクリントンさんの不適切なアレなど、そんな風に攻撃対象となった大統領を巡る党派間の争いは、いつしか彼らはその大統領制度という政治システムそのものへの信用を失いつつあるのです。過去に『英雄』たる人物が多かったからというのは解りますが、端から見ると「偉大な大統領」という存在にあまりにも期待を掛けすぎだろうとは思えてしまいますが。
人種や言語や宗教や経済格差など、アメリカを分断するとされる要素は過去幾つも挙げられてきましたけど、しかしそのどれもが結局はそこへ行き着くことになる。おそらくはそれは「鶏と卵」というよりは、正しく共犯関係なのだと思います。分断が進めば進むほど政治不信は強まり、そして政治不信が強まれば強まるほど分断が進んでしまう。
故に、最早アメリカの政治システムは信用ならない、と。


個人的には、オバマさんに期待していたのはこうした点への「政治的な癒し」だったりしたんですよね。これまでの大統領たち――それこそニクソンさん以来――彼らは常にスキャンダルを針小棒大にマスコミから追われ続け、かくして必然の結果として大統領制への信頼そのものが傷つけられてきた。まぁそれは多分に自業自得の面もあったわけですが、それにしても行き過ぎていた面は端から見ていても感じざるをえなかったわけです。
そこへオバマさんが登場した。身も蓋もなく言えば黒人大統領という「攻撃しにくい」彼だからこそ、党派性を和らげることができるんじゃないかと。実際彼も最初の頃は超党派超党派言ってましたしね。
――まぁ蓋を開けてみればまったく逆方向に進んでしまったわけですけど。
もちろんそれが間違っているとは言えませんし、概ね「正しい」ことでもあったのでしょう。それは良く言えば「勝算があるから」だったし、まぁ悪く言えば「五分五分」でしかなかったんですけど、彼はそれでも敢えて勝負に出た。ただそんなことをしてしまえば、『世論調査』こそが支配する現代アメリカ政治にあって、その反対側に回る人たちは正しくその絶対なる『神の声』に従って反対に回らざるをえなくなってしまうというのに。
かくして、過半数(をちょっと越えるくらいの)の確固たる支持あったオバマさんだからだからこそ、その勝負に打って出ることが出来てしまった。もし彼が政治的にもっと弱ければこんなことにはなっていなかったでしょう。
結果として彼はギリギリ勝利を手に入れたものの、そしてその勝利の背後には、敗北した側の『神の声』に従わざるをえなくなった人たちがそこに蠢いている。


なのでまぁこうした議論において「議員」だけを責めるのは酷な話ではあるかなぁとも思うんですよね。共和党にしろ民主党にしろ、しばしば、その「妥協しない」姿勢を批判されていたりしますが、結局そんな彼らを選んでいるのはそれぞれの有権者たちなのです。そして(日本よりもずっと)有権者の声が届きやすいからこそ、彼らは個人的に妥協したくても、しかしそれを地元の有権者たちが許さないということはよくあることなのです。
つまり、政治的に正しく「声」の大きな人たちを無視できない議員たち。
そしてそれを見た大多数の中道穏健派の有権者たちは、より深く政治に絶望するのです。



ほんともう一体なんでこんな事に。
がんばれアメリカ。