政府による『平和父権主義』の是非

知るべきか、知らざるべきか。



中国海軍艦が海自護衛艦にレーダー照射 写真4枚 国際ニュース:AFPBB News
ということで大盛り上がりの「レーダー照準」「ロックオン」のお話であります。まぁなんというか、国際政治ウォッチャーな人びとの懸念どおりの展開になっていて苦笑いするしかありませんよね。これまでの日記でも何度か触れましたけども「ぶっちゃけ日中間が最も危機に近いだろう」なんて言われていた見事そのまんまへ。
朝日新聞デジタル:尖閣国有化前から射撃レーダー照射 政府関係者明かす - 政治
で、実はその「レーダー照準」が前政権時代からずっと行われていて、今回安倍政権になって政府が公表したことによって、こうして大騒動となっているらしい、というお話が出てきたそうで。
個人的にはこれはとても愉快なジレンマを考えさせるお話だなぁと思うんです。


時事ドットコム:「日本側は故意に事件拡大」=レーダー照射で中国軍幹部
朝日新聞デジタル:中国紙サイトが日本批判「問題作り上げた」 軍照射 - 国際
あちらの中国さんちでは「日本が針小棒大に宣伝し事態を悪化させている」と言われているそうですが、確かにその論理で行くとそれなりに筋は通っているんですよね。実際、「公表しなければ」私たちも何も知らないまま、こうして騒動にならなかったはずなのです。もうずっとその海域では日本と中国の艦艇が睨み合いを続けていることを知りながらも、日常に埋没させてきたはずなのです*1。まさにそれはある種の「平和」ではありますよね。
――ところがそれは続かなかった。
政権交代によって誕生した空気読まない安倍さんが、見事にこうして公表してしまった。もちろんそれは――現状でおそらく多数の日本人が支持しているように――私たちが当然「知るべき」情報の一つであるという見方もできます。しかし、それでもそうした情報開示こそが、こうして危機を煽ってしまった側面は否定できないわけで。
だから前政権の民主党政権が、あるいは(それ以前にもあったとすれば)過去の自民党政権も、平和を望むからこそ隠蔽したくなる気持ちも理解できなくはないんです。国民は政府に全て委ねていればいい、という余計なお世話なパターナリズム
だってそんな情報を公開してしまったら、国民世論がどうなってしまうのかはかなり容易に想像できてしまいます。今回の件もまぁ見事に煽りまくっているように、その誕生から現在に至るまでマスメディアの普遍的な役割の一つは――本人達は否定するでしょうけど――いつだって「戦争扇動」だったわけだし。
その意味で今回の安倍さんの公表は「平和を損ねている」というのは一面の真理でもあると思うのです。ただ、じゃあ逆に「平和の為に公表しない」という選択肢がどれだけ受け入れられるかは疑問でありますけど。



さて、では私たちは一体どちらを支持すればいいのでしょうね?
そのパターナリズムか、あるいは知る権利か。
普段から「情報開示こそが必要だ!」と言っている人はそうすればいいし、逆に「国益の観点から秘するべき情報もある!」という人はそうすればいいでしょう。今回の件では見事にポジションが入れ替わってそうなのがとても愉快な構図だと思ったりしますが。
現代の政治議論における主要テーマの一つ。今回の件では実はそういうことも問われているのかなぁと。


みなさんはいかがお考えでしょうか?