また一歩「核ある世界」へ

北朝鮮さんちの執念。



北朝鮮核実験、米中露など各国が非難 国連安保理は緊急会合へ 写真3枚 国際ニュース:AFPBB News
ということで見事にぶっぱした北朝鮮さんちであります。三年ぶり三度目。
朝日新聞デジタル:日韓首脳が電話協議 北朝鮮への制裁決議で連携確認 - 政治
――で、また核実験に対する制裁云々というお話が出てくるわけですが、まぁそれが本当に抑止力になればそうすればいいと思いますが、正直もうあまり期待は持てませんよね。だってもうこれで三度目ですよ。「三度目の正直」などなく、結局「二度あることは三度ある」だけだった。
失うものがない人たちを止めるのは容易ではない、という身も蓋もない事実が証明されてしまっただけ、といってはおしまいではありますけども。完全に決意した人を止めることなどできない。それこそ「殴ってでも」止めない限り。でもそんな野蛮なこと(犠牲も費用も大きすぎて)容認できない。無力で計算高い私たち。
ついでに、今回の件が更に落胆させるのは――事実上『軍事的オプション』を放棄した私たちにとって――最後のわずかな希望でもあった「指導者交代」の結果が、このザマであったことも大きいのでしょう。結局息子の金さんになっても何も変わらなかった。


こうなってくる本当にもう「色々と」考えなくてはいけなくなってくるのだろうなぁと。
つまり、普通に考えれば、北朝鮮さんちも彼らなりに必死に死に物狂いで核開発を進めているわけです。その努力を他に向ければいいのにとは素朴に思ってしまいますが、兎にも角にも彼らは長距離ミサイルと核開発こそが生き残るたったひとつのさえたやり方だと信じている。
そして開発には成功した――それはいいとして、ではその次にやってくる量産化=商品化はいつなのか?
そのステージに至ったかどうかが焦点であるわけですよね。もしかしたら今回でその段階に達したのかもしれない。してないかもしれない。
だからこそ、今回の件では専門家の皆さんが今回の実験が、ウラン型なのかプルトニウム型なのか、と右往左往しているわけです。もし兵器として、そして商品としてより「優秀な」ウラン型だったりしたら以下略。
その段階に至ることで、北朝鮮さんちは再びアメリカの関心を取り戻すことができるかもしれない。彼らが願って止まない「対等な」交渉相手として。最初の開発疑惑以来ほぼ一貫して無視してきたアメリカが、「再び」北朝鮮さんちに対峙しなければならないタイミングがついに。
およそ18年に渡るアプローチが報われる時。いやぁ異常な愛執であります。


実際、表向きはともかくとしても、本音としてはその『商品』を欲しがる国や組織は一杯ありそうですよね。特に中東辺りにはその動機も支払能力もあるわけで。
ちなみに、この構図で面白いのは中東で盛り上がってる大きな対立関係のどちらにもそれが流れる可能性があるという点であります。もちろん最悪のシナリオの一つでしかありませんが、しかしもし中東で核開発競争が起きてしまった時、北朝鮮産の核兵器が大きな役割を果たすことになってしまうと。それはアメリカやヨーロッパやロシア、そして中国さえも、ついでにインドもパキスタンも、ほとんど誰も望まない事態ではありますが、しかし「核保有国」北朝鮮さんちはそうではない。体制存続が至上命題の彼らにとっては知ったことではない。
ただでさえ刺激を受けた周辺国、日韓の核開発が恐れられていると言うのに、そちらにまで火をつけかなねない北朝鮮さんちの核開発。いやぁスケールの大きなお話ですよね。
かくしてこのお話が最終的に行き着くのは、現状の核拡散防止条約=NPTへの根本的な挑戦であります。そしてそれこそが北朝鮮さんちが、物理的な抑止力と同時にあるもう一つの面での(ただの『開発』だけでは得られなかった)対アメリカの最強のカードでもあります。まぁ危険すぎて事実上使えないカードではあるんですが、しかしそれを持っていると知らせるだけで十分な効果がある。もうアメリカにとって、北朝鮮をこれまでのように無視することも、かといって容認するわけにもいかない。
冷戦時代が終わることで最早過去の産物となったはずの「核ある世界」の復活へ。
元々矛盾を抱えながらもどうにかこうにか続けられてきた『NPT=IAEA体制』はこれから一体どうなってしまうのか?


こうしたことが「核廃絶」を訴えてきたオバマさんの時期に起きるのはとっても皮肉なお話です。まさに彼は米露の核兵器を更に圧縮することでNPTを建て直し、そして核廃絶という理想へと進もうとしていたわけだから。ところがそこに、最も嫌なタイミングで横槍を入れて見せた北朝鮮さんち。
もしこれを他人事として見るならば国際関係のテーマとして、非情に面白いお話ではありますよね。
……他人事じゃなければ。