あからさまに「諸国民の公正と信義」を試してしまった人びと

日本よりも中国よりも民主党よりも自民党よりも、結局の所一連の事態によって最も深く傷ついてしまったもの。


「中国刺激するな」 野田政権の尖閣での消極姿勢また判明+(1/2ページ) - MSN産経ニュース
尖閣「遠くで警備」指示…野田政権、国有化後に : 政治 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)
ということで産経が先行していたニュースは、まぁかなり盛り上がってしまったせいで概ねそれに近い事態があった、という所に落ち着いてしまいそうであります。セイケンコウタイってすばらしいなぁ。

 政府関係者によると、海上自衛隊は野田政権発足当初、従来の政権と同様に、必要に応じ、東シナ海で中国艦艇に3キロ程度まで近づいて警備に当たっていた。

 しかし、尖閣諸島の国有化をきっかけに、日中対立が激化した昨年9月以降、目視できない距離からにとどめるよう指示があった。当時の政権幹部が、海自と中国軍が接近すれば軍事的緊張が高まるおそれがあると判断し、中国に配慮したとみられる。

尖閣「遠くで警備」指示…野田政権、国有化後に : 政治 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)

うーん、なんというか、無謀な賭けに出てしまったよなぁと。もちろんこちらの配慮により相手も自重してくれればベストだったんですよ。その意味では別に――一部の人たちが「売国」的とお怒りですが――そこまで悪い選択肢ではなかったのでしょう。おそらく彼らは真に善意からやっていたはずで、成功さえしていれば何の問題もなかった。
しかし、もし「そうならなかった」場合、その後の展開が一体どういうことになってしまうのか考えていなかったのかなぁと。


こちらが相手を信頼して一歩引いたら、相手が更に一歩前に出てきてしまった。
「試した彼らがバカだったよね」とそれだけで終わるお話ならばそれで良かったんですよ。


こんな事が事後的に広く有権者に明らかになってしまったら、燃え上がらないわけがないじゃないですか。その不満が行き着くのは結局の所、まさにあの「諸国民の公正と信義を信頼する」という前文であるわけで。それこそずっと言われ続けてもきた「なぜあいつらを信頼なんて出来るのか?」という人々の不満は爆発してしまう。もちろん一部の改憲論者たちは喜ぶでしょうけど、しかし大多数の穏健な人たちでさえ危惧するような、変に勢いに乗せてしまったらロクでもない所にまで着地してしまいかねない。
もちろん成功していればリターンもそれなりにあったでしょう。そのやり方で偶発的な軍事的衝突を避けることができれば、同時にあの素晴らしき平和憲法の存在感だって確実に増したはずなのです。ところが、反対に失敗時のリスクと言えば、まさにその戦後日本の「平和に関する考え方」――平和憲法そのものまでが問われかねない事態を引き起こしてしまう可能性だってあるわけで。正直ハイリスクでローリターン過ぎますよね。護憲や過激な改憲を避けようとすればこそ、その存在そのものが揺るがされるような事態は全力で回避すべきだったのです。
長期的には平和憲法なんてどうでもいいから目先の衝突を回避したかったのだ、と言いたいのならば話は解りますけど。
こうした一目瞭然な構図を見ていると、彼らがただ単に売国的であるというよりは、むしろ彼ら自身が実は「平和憲法の改正までも視野に入れた」熱狂的な改憲論者だったという方がよっぽどありそうな話だよなぁと。ワザと相手に隙を見せて、そこに突けこませ、世論を誘導しようとする。いやぁザ・姦計であります。


正直これを中国側から見たら、誘われてホイホイ乗ってしまったら事後になって「お前は信頼を裏切った!」と責められている構図ですよね。なんて日本は悪どい国なのでしょう。
そりゃレーザー照射するのもむべなるかな。