『善意による覇権』から『善意による傍観』へ

しかし最終的に同じ地獄にたどり着く。


泥沼のシリア内戦、蜂起から丸2年 写真5枚 国際ニュース:AFPBB News
イラク戦争から10年、民間人の犠牲11万6000人 米報告 写真1枚 国際ニュース:AFPBB News
そういえば二年前のシリアも、そして十年前のイラクも同時期に始まっていたんだなぁと今更ながらに気付きました。三月ってこわい。こうしてニュースとして並べて見ると、その経過はほとんど真反対にありながら、しかし結果として同じ所に帰結しているのは皮肉なお話ですよね。
一方ではアメリカが強引に介入した結果であり、そしてもう一方ではアメリカ(をはじめとする国々)がそろって無視した結果、ご覧の有様に。なんて見事な両極端。

3年目に突入したシリア内戦ではこれまでに少なくとも7万人が死亡し、100万人が難民と化した。行方不明者や国内避難民も数百万人に上り、経済的にも人道的にも大惨事となっている。

泥沼のシリア内戦、蜂起から丸2年 写真5枚 国際ニュース:AFPBB News

それによると、2003年〜11年の8年間に死亡した非戦闘員のイラク人は、少なくとも11万6903人に上った。さらに、医療関連設備が破壊されたことで多くのイラク民間人がけがや病気を悪化させる結果となったほか、500万人が住む家を失ったという。

イラク戦争から10年、民間人の犠牲11万6000人 米報告 写真1枚 国際ニュース:AFPBB News

少なくとも現状のペースとしてはシリアの方がやばいので、むしろアメリカが介入した方がマシだったかもしれないよね、ということは出来るかもしれませんね。Q.E.Dです――あ、冗談ですので石を投げないでください。
この両者の対比は今後の国際関係の歴史において、典型的なテストケースとして語られることになるんじゃないかなぁと。行き着くのはユーゴスラビアか、ソマリアか。


もちろん今後シリアが急転直下安定していく可能性もないことはないんですが、しかしイラクの『戦後復興』はアメリカがその道義的責任上嫌々ながらも膨大な資金(最終的に3兆ドルという金額)と人を投入せざるを得なかったのに対して、じゃあシリアでは一体誰が継続的に責任をもって復興を援助していくのかというと――以下略。
単純にアメリカの失敗というよりは、そのあまりにも大きすぎる重荷を抱えることになったアメリカを目の当たりにしたからこそ、シリアを前に立ち竦んでしまう。私たちはより『正しい戦争』を望んだ結果、だからこそ一歩も動けなくなっていく。綺麗な戦い*1大義名分、利害関係諸国の同意、そして戦後復興の完遂、最早ただ戦争に勝つだけではまったく足りない。
かくして、とてもそんな重責は担えない=無責任なことはできない――あの無責任なアメリカのようにはなりたくないと、善意によって傍観する人びと。まぁ確かにそれは私たち自身が、あのアメリカを通して、望んだ風景ではありますよね。


ということで「懸命にも」再び引き篭もり始めるアメリカについて。
特にオバマさん以来のアメリ外交政策等を見ていると、ブッシュさんの『9・11以後』時代は例外であり、やはり90年代にあった風景の続きとなっていくのだろうなぁと。

*1:この辺はあのイラク戦争時代よりも「更に」シリア内戦のyoutube動画がアップされまくっているのを見ると色々考えてしまいます。