中二病でも命名したい

「自分の子供は自分と同じ価値観に違いない」という確信の下に、良かれと思って。


CNN.co.jp : 子どもに悪魔の名前はダメ、NZの却下名一覧公表
「マジで」?新生児の名前の却下リストを公開 NZ 写真1枚 国際ニュース:AFPBB News
センスがすごい。まぁある種の親の愛情表現ではありますよね。親達は皆それぞれに、子の将来の成功を願って――特異な「名前」を付けることで――良かれと思って付けているのでしょう。『命名』はそれこそ、親として子に与える(そしておそらく一生ついてまわる)最初で最大級のプレゼントであるわけだから。特に少子化の世界にあっては尚更。

自分たちの子どもを「ルシファー」と命名しようとした親は過去12年で6組、「メシア」の名で登録しようとした親は2組いたという。
同国の規定では、人の感情を害するような名前や意味もなく長い名前、称号や階級を思わせる名前は認められない。
2001年以来で申請が却下された件数が最も多かったのは「ジャスティス」(62件)、次いで「キング」(31件)だった。さらに変わったところでは、「Mafia No Fear」「4Real」「Anal」などの名を付けようとした親もいたほか、「*」で「スターシンボル」、「.」で「フルストップ」と読ませようとした親もいた。
一方で2008年には英国のたばこブランドから取った「ベンソン」と「ヘッジス」の名を双子に付けることが認められて物議をかもし、「バイオレンス」「ナンバー16バスシェルター」(16番バス停留所)などの名も認められている。

CNN.co.jp : 子どもに悪魔の名前はダメ、NZの却下名一覧公表

ただまぁここで恥ずかしいのが、「ルシファー」「メシア」「ジャスティス」「キング」といった名前が、実はアナタ以外にも沢山居るんですよ(その発想は全然ユニークじゃないんですよ)ということを指摘している点なのだろうなぁと。
概ねこういう人たちは、その周囲とは一線は画した奇想天外さにこそ注目して名前を付けているのでしょうから、その意味では今回の公開はそれなりに効果が上がっていたりするんじゃないかと思います。


しかし、そんな有象無象の中にも本物は居るもので、「*」で「スターシンボル」、「.」で「フルストップ」という辺りはすごい。最早既存の言語の枠組みすら突破している。日本でも顔文字とかAAとかを提出する人がそのうちでてきそう。
対抗して「.→」(ピリオドの向こう側)というのを思いついたのでどなたか是非。


ただまぁ不毛な世界ではありますよね。有名な徒然草の世界。

寺院の号、さらぬ万の物にも、名を付くる事、昔の人は、少しも求めず、たゞ、ありのまゝに、やすく付けけるなり。この比は、深く案じ、才覚をあらはさんとしたるやうに聞ゆる、いとむつかし。人の名も、目慣れぬ文字を付かんとする、益なき事なり。
何事も、珍しき事を求め、異説を好むは、浅才の人の必ずある事なりとぞ。


お寺の名前や、その他の様々な物に名前を付けるとき、昔の人は、何も考えずに、ただありのままに、わかりやすく付けたものだ。最近になって、よく考えたのかどうか知らないが、小細工したことを見せつけるように付けた名前は嫌らしい。人の名前にしても、見たことのない珍しい漢字を使っても、まったく意味がない。
どんなことも、珍しさを追求して、一般的ではないものをありがたがるのは、薄っぺらな教養しかない人が必ずやりそうなことである。

徒然草(吉田兼好著・吾妻利秋訳)

皆が皆少しでもその個性を出そうとしていけばその連鎖が最終的に行き着くのは結局、「スターシンボル君」や「フルストップ君」なわけで。その意味で浅学さや教養あるなしはともかくとして、やっぱり不毛な世界ではあります。