ウォーターゲートから得られる教訓

今日の「まるで成長していない」ネタ。


ニクソンの取り巻きのよう=リビア領事館襲撃への対応でウッドワード氏 - WSJ.com
「○○ゲート」の生みの親(といっても別に彼がウォーターゲート以降の事件について何でもかんでも「〜ゲートだ!」と始めたわけではない)であるウッドワードさんだからこその、痛烈なお言葉であります。

【ワシントン】ニクソン大統領を辞任に追い込んだウォーターゲート事件の報道で有名な米ワシントン・ポスト紙の編集幹部であるボブ・ウッドワード氏は19日、NBCテレビのインタビュー番組に出演し、一昨年のリビアベンガジの米領事館襲撃事件に対するオバマ政権幹部の対応を、ウォーターゲート事件に関与したニクソンの側近になぞらえて強く批判した。
 ウッドワード氏は、オバマ政権が襲撃事件後に議会指導部から要求された事件の論点整理を都合よく編集したと指摘、「ウォーターゲート事件ではないが、オバマ政権の中にニクソンの取り巻き連中のように行動した人がいる。大きな問題だ」と述べた。2011年9月11日に発生した襲撃事件では、クリストファー・スティーブンズ・リビア大使を含め4人の米国人が死亡した。

ニクソンの取り巻きのよう=リビア領事館襲撃への対応でウッドワード氏 - WSJ.com

もちろんこれであの事件のように『大統領弾劾』にまで行くのかというと、おそらくそれはないんでしょう。ただそれでもこうしたスキャンダルが、政権へのダメージとなることは多分にあるわけで。特にその対応に失敗したのならば尚更に。



ちなみにウッドワード先生は、米国大統領はウォーターゲート事件から二つの基本的な教訓を学べるはずだ、と仰っています*1

一つは、もし疑わしき行為があったら、事実関係がどうであれ、可能な限り早急かつ完全にそれを公表せよ。
二つ目は、検察官もしくは上下両院議員、報道記者のだれが行うにせよ疑惑や闘争を永続的に固定化してしまうような第三者の調査を許すな。

なので上記リンク先で「大きな問題」としているのは、少なくとも第一の点で、今回のリビアをめぐる問題についてのオバマさんの対応は適切なモノではなかった、という所なのだろうなぁと。リビアに関する米国の介入問題から端を発した、ウソがウソを呼ぶというよくある連鎖、といってしまっては身も蓋もありませんけど。結果的に火消しが後手後手にまわってしまっている現状。こんなことならさっさと早期にケリをつけておけばよかったのにね。でも選挙があったからどうしようもない。
米大統領の法律顧問、IRSの保守団体狙い撃ちを即時に報告せず - WSJ.com
この辺はIRSの問題にも通じているのかもしれません。


今後の焦点としては、やはり二点目という方へ移るのでしょう。この問題に関する調査の展開について。それはやはり昨今流行の党派性などによる政治的闘争を抑制するようなものでなければならないと。むしろ、その調査活動そのものが「権力の濫用」に繋がってしまいかねないからこそ。
もちろん真相を解明することは大事であるけれども、しかしそれをいたずらに政争の具にしてしまうことも同じくらい不毛なことであるわけで。故に恣意的な第三者調査も避けなければならないのです。
もしここでもコケてしまうと、単なる政権のスキャンダルというだけでなく――まさにウォーターゲートがそうであったように――国家の大統領制や税制といった「制度」そのものに対する瑕疵という所にまで行き着いてしまう。

*1:『権力の失墜 下』P483