中国的宇宙観

文化がちがーう!


「サンフランシスコ平和条約は違法かつ無効」、釣魚島問題めぐり中国外交部 (XINHUA.JP) - Yahoo!ニュース
まぁ「いつもの中国さんちらしい態度」と言えばその通りではあります。彼らは現在必要であるのならば、過去の歴史など簡単に書き換えてしまう。

新華社北京】 中国外交部の洪磊報道官は30日の定例記者会見で、「中国政府はサンフランシスコ平和条約が違法かつ無効だと認識しており、受け入れない」と述べた。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130531-00000030-xinhua-cn

それは私たちのような価値観からすると、とても奇妙な行動ではあります。私たちにとっての常識的な考えからすれば、まず過去がありその上に現在が築かれている、であるわけで。だから現在になって「中国政府はサンフランシスコ平和条約が違法かつ無効だと認識しており、受け入れない」なんて言ってしまっては、それこそ戦後日本だけでなく現代中国の根幹まで否定されてしまうのではないかと余計なお世話なことを思ってしまう。
――ところが彼らはそうではないのです。まず現在があって、その上で、それに最も適切な過去が存在していると考えている。過去が現在を説明するのではなく、現在が過去を説明するのです。
過去は一本道なのではなく、未来と同様に無限に存在する。
なんだか平行宇宙論なお話に近いですけども、だから今回の中国さんちの奇行は是非や論理の問題ですらなくて根本的な考え方や哲学そのものから違っている、というお話であるんじゃないかと。かくして彼らは現在の利益を追求する為に――私たちから見るとあまりにも容易に――現在に都合のいい過去を語ったりする。
それで現在におけるポジションの正当性が失われることなど気にしない、面の皮が厚いというよりは、そもそもそれで失われると考えてさえいないのです。大事なのは現在であって、過去は幾らでも「後から」着いてくるのだ。その意味では中国で教えられている歴史――文革や大躍進や天安門あるいはそれ以前の王朝時代といった中国の負の歴史って、別に都合の悪いことが検閲されているとかそういうレベルですらなく、むしろ当然の措置をしているに過ぎない。


ちなみに、こうした中国的宇宙観こそが現在しばしば見られるニセモノ・海賊品祭りな現代中国経済を形作っている、と『ならず者の経済学』の中で著者のロレッタナポレオーニ先生は述べております。
それはまぁ「遵法精神に薄い野蛮人だから」という理由ではなくて、そもそも彼らにとって過去に由来する正当性(特許や著作権)のことなど考慮する必要性が認められていないからなのだと。これまでの歴史――王朝の勃興と滅亡の繰り返し――がそうであったように、時の権力によって常に正当性が改変されてきたことによって育まれた彼らのその宇宙観こそが、現在でもその行動の基本原理にある。


ということで、今回の「中国政府はサンフランシスコ平和条約が違法かつ無効だと認識しており、受け入れない」というトンデモ発言も、構図としては似たような所にあるのかなぁと個人的には思います。
正当性は過去の歴史に由来すると考える人びとと、正当性は現在の状況に由来すると考える人びと。
そもそもの宇宙観がまったく違う両者について。同時にこれって、真の意味での異文化交流ってこういう人たちと如何にして付き合っていくのか、という問題でもあるのだろうなぁと。まぁもちろん俺たちの考え方が正しいので中国は従えばいい、という風に押し付けることもできますけども。実際中国さんちは概ねそういうポジションなわけですし。


僕にはさっぱり解決法がわからないので、その辺について日頃熱心な方は是非ともがんばってください。