オバマもつらいよ

「ブッシュだから仕方ない」と「まさかあのオバマが……」と。


暴露された米政府の極秘個人監視プログラムの概要 写真1枚 国際ニュース:AFPBB News
米政府の情報収集、暴露は元CIA職員 亡命求める  :日本経済新聞
オバマ大統領の矛盾を露呈させた米NSAの機密漏えい - WSJ
ということで、前々から噂としては囁かれていたものの、見事に内部関係者が事実を暴露――そして亡命希望、という劇的な展開でものすごく愉快なことになってるアメリカさんちであります。中国とサイバー戦争をやっていたと思ったら、サイバー内戦もやっていたというオチ。実質的なダメージとしてはこの対中国という面がやはり大きいのでしょうね。あれだけ中国を批判しておきながらこのザマだっていう。
先日の三つのイベントだけでもめんどくさいのに、シリアもついにカウントダウンが始まりつつあるしそこへ更に加えてこうなってしまうのは、オバマさんも色々大変だなぁと。

 現在、香港のホテルに滞在している本人の了解を得て公開した。同氏はオバマ政権下で市民に対する監視が強化されたことに失望したと説明。ガーディアンが公開したインタビュー映像では「政府がプライバシーやインターネットの自由を破壊するのを許せなかった」と語った。

米政府の情報収集、暴露は元CIA職員 亡命求める  :日本経済新聞

まぁ構図としては本人が述べているように、オバマさんへの失望、という面が大きいのでしょう。その意味では、チェンジチェンジ言ってた彼の自業自得という面も少なからずあったりするのかもしれません。下手にアメリカを変えるなんて宣言したものだから、ついでにノーベル賞まで貰ってしまったものだから、彼への「これまでのの米国大統領とは違う!」という期待があまりにも肥大化してしまった。



元々こうした事態は米政治ウォッチャーの皆さんから懸念されていたお話ではあるんですよね。あまりにもオバマファンタジーが一人歩きし過ぎた結果、そのバブルが弾けたとき一体どうなってしまうのか、なんて。
ちなみにこうしたオバマファンタジーが今回とは逆に、ポジティブな影響をもたらしたのがあの『ビンラディン暗殺』でもあったわけで。彼のようなリベラル(だと思われていた)人間が、アメリカの仇敵をぶっ殺したことに少なくない保守派の皆さんがオバマ大統領を喝采したのです。「まさかあのオバマが!?」なんて。
――ところがそれはコインの裏と表のように、やっぱりネガティブの影響もあったりした。「まさかあのオバマが!?」という失望という形で。
あれだけ期待されていた彼はもちろんそれなりにリベラルで例えばオバマケアなんかはどうにかたどり着いたものの、しかし同性愛の賛成もかなり遅れたし、グリーンエコノミーはもう完全に行方不明だし、事件が何度あってもやっぱり銃規制は進みそうにないし、グアンタナモはそのままだし、無人機で爆殺祭りだし、と実の所(もちろんそれ自体は責められることではなく)極普通の民主党出身の大統領に過ぎなかったのです。
かくして、そんな幻想を真に受け「裏切られた!」という人が登場する。
その意味では彼はブッシュさん時代には「初めから期待していなかったから」暴露されずに、オバマ大統領になって「失望した結果」暴露に走ったというのは、まぁ皮肉な結果ですよね。

 イラク紛争を「愚かな戦争」に分類したオバマ大統領に賛同した人の多くは、その比較的迅速な米軍の段階的撤退に満足していたが、大統領がかねてから支持できると言っていた紛争地、アフガニスタンへの増派命令を下したときには唖然(あぜん)としてしまった。オバマ氏がイラク紛争を激しく非難するのを聞いていた人たちの多くは、より広範な対テロ戦争でもより柔軟な態度をとると思い込んでいたが、テロ組織のメンバーに対する無人爆撃機の使用を拡大するなど、そのほぼ逆であったことが最近判明したことに驚きを隠せない。オバマ大統領の味方の一部は愕然(がくぜん)とし、敵の一部は驚きながらも喜んでいるのだ。

オバマ大統領の矛盾を露呈させた米NSAの機密漏えい - WSJ

そんなオバマさんの裏面。もう一つの面。もちろん米国大統領であれば当然持っているべき怜悧な実務面。しかしノーベル賞なんてもらったせいでより強調されてしまった影の面。それによって皮肉にも保守派からは「オバマもやるべき時にはやる『普通の』大統領なのか」と安心され、しかしリベラルからは「オバマも『普通の』大統領に過ぎなかったのか」と絶望される。
「まさかあのオバマが!?」の光と影。


あの時の「まさかあのオバマが!」という称賛と、今回の「まさかあのオバマが!」の反発は、まさにコイン裏表であったのだろうなぁと。バカ扱いの極致だったブッシュさんもアレでしたけど、オバマさんのように人気者も辛いよね。
勝手に期待され、勝手に絶望される。まぁ米国大統領なんていつだってそんなものだと言っては身も蓋もありませんけど。