フランス的例外と、それを担保する軍隊への異常な愛情

『フランス的例外』を支えるもの。


仏革命記念日、軍事パレードと花火でお祝い 写真30枚 国際ニュース:AFPBB News
なんちゃら革命の先駆者たるフランスさんちの革命記念日たる7月14日に毎年行われる軍事パレードについて。まぁ特に何の感想もなかったのでスルーしていたんですが、面白いお話を拝見したので以下適当に。
フランスは「軍国主義」の国である : 地政学を英国で学んだ
歴史的にフランス人が愛する軍隊について。毎年恒例の軍事パレードを見るとそれがよくわかるよね、というお話。一部の平和主義な人たちが無邪気に憧れる、アメリカに堂々と「ノン」と言える、フランスの軍国主義っぷり。この辺りはフランスさんちの例外主義の象徴のひとつではありますよね。

●フランスの左派はパリ祭における軍隊の役割を右派よりも強調する。これは外国から来た人々にとっては奇妙に映るかもしれないが、理由は単純だ。軍は国家の復活を象徴するだけでなく、共和国化した、革命を行った国家の伝統を受け継ぐ存在であるからだ。

●話を数世紀先(そして二つの共和制の後)の現在に移すと、フランス人はその政治思想に関係なく、相変わらず今でも軍を尊敬している。

●たとえば二年前に「緑の党」の大統領候補であったエヴァ・ジョリーが、パリ祭のパレードに兵隊や兵器を参加させるかわりに「市民」のパレードにしようと提案したことがあるが、直後からあらゆる政治家や知識人たちからの猛反発を食らい、ジョリーはすぐにその提案を引っ込めたことがある。

フランスは「軍国主義」の国である : 地政学を英国で学んだ

彼らは市民の軍=フランス軍こそが、自分たちフランスがフランスであることの象徴、つまり自分たちのルーツであると確信している。
例のイラク戦争以来フランス独自の外交政策――ぶっちゃけてしまえばアメリカのやり方に正面切って「ノン」と言える彼らのその態度に、やっぱり日本でも無邪気に憧れ「彼らのように振る舞うべきだ」なんて声は少なくなかったわけで。しかし、フランスのその独立心が意味しているのは「自らの軍隊」を持ち、それに誇りを持っているということでもあるんですよね。
軍国主義とは微妙に違う、彼らの軍隊を背景とした自主独立主義。ゴーリズムの根源にあるもの。


だからフランスの彼らは独立の象徴として、私たち日本よりもずっと小さい経済規模でありながらも、自らの手で空母や核兵器を持つし自身の権益の為ならばフランス軍を海外に派遣することを厭わない。フランスは他の国とは違う独特の文化を持っている。そして、それを守るためには(ある程度の)犠牲や損失を厭わない。
フランスの例外主義・独立路線ってつまりそういうことでもあるんですよね。だからこそ欧州連合をめぐる歴史において欧州連合の偉大さえ讃える一方で、しかし一貫して彼らは統合推進には反対してきたわけで。
(他国に依存しない)軍の存在が象徴する彼らの覚悟。だから逆説的にフランス軍こそが、フランスの例外そのものとも呼べるのです。彼らはその一線を守っているからこそ、自らの文化や価値観が守られていると確信している。
http://sankei.jp.msn.com/world/news/130707/amr13070707000001-n1.htm
米欧FTA絡みで、少し前にフランス映画の補助金でも揉めていたりもしましたけど、構図としてはこうしたお話と近いところにあるんですよね。彼らは自分たちの独自の文化を守るためならば、世界=グローバリズムに背を向け、そして余計な出費が掛かろうとも、外部から余計な口出しはさせるべきではないと考えている。
もちろん彼らのその誇り高い(傲慢な)生き方を素晴らしいと思うならば、彼らのように生きるのもいいでしょう。フランス人が素晴らしきフランス文化を守るように、日本人も素晴らしき日本文化を守ろうではないか、と。
――ただ、そんな独自路線の対価として彼らが払っている「犠牲」を見ようとせずに、彼らの振る舞いのみに無邪気に憧れるのは、まぁあんまり正しい認識だとは言えませんよね。まさにフランスの人たちが半ば諦め顔で受け入れているように、当然それは政治面でも経済面でも大きなデメリットがあるのです。
しばしば対米従属などが批判的に語られる日本ではありますが、しかし私たち日本人にもそんなフランスのような犠牲を払う覚悟があるのか? と言われると困ってしまうよなぁと。


その解りやすい一端として、リンク先でも奥山先生が言われているようにフランスという国は実はとっても軍事主義だったりするのです。それは単純に軍隊を愛しているというよりは、まさに自身の国家の独立・建国神話を担保する象徴として自身の軍隊を見てもいるから。まぁ多かれ少なかれどこの国でも見られる風景ではありますが、しかし彼ら例外主義を標榜するフランスにとっては特にそれが強い。
国家の安全を――まるでどこかの島国のように――他国に依存するなんてとんでもない!
だからこそ、フランスはフランスでいられるのだ、と。


フランス的例外と、それを担保する軍隊への、異常な愛情。まぁめんどくさい人たちと言ってしまっては身も蓋もありませんが。