アメリカという国家だからこそ恐れるスノーデン君

今この瞬間世界中の国家は一つの意識を共有している。



スノーデンはなぜたらい回しにされたのか | ワールド | 最新記事 | ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト
そういえば以前の日記でもネタにして書いたように、やっぱりスノーデン君は宙ぶらりんのままであります。せいぜい一部の例外と言っていい反米国家のおもちゃになっているだけ。
彼がもう少し『悪人』だったら話は簡単だったのにね。しかし彼はどこまでいっても『善意』の人であったために、誰も彼と妥協や密約を交わすことができないまま一躍時の人となってしまった。
まぁやっぱり、なんというか難儀な人だよなぁと。強い(「自由」という正義への)信仰を持ち、ある程度までの知識を持ちながら、しかし(国家が持つ裏の顔にショックを受けるだけの位の素朴さを持ち合わせている人物特有の苦悩。素朴な正義と公正を信じ、連邦政府の強権を憎む素朴なアメリカ人らしいとも言えますけど。


ともあれ、しかしやっぱり彼のやったことは世界中すべての国がやっぱり他人事ではないわけで。

 スノーデンは「反体制派」とは呼べても、米政府が彼を拘束したい理由は思想的なものではない。守秘義務のある情報を暴露して法を犯したことだ。

 こうした法律はすべての国にある。自国民がやれば犯罪と見なされる行為に走ったアメリカ人を、わざわざ亡命者として受け入れる国はまずないだろう。

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もちろんアメリカという超大国に対する配慮(ぶっちゃければ圧力)という理由もあるのでしょうけど、同時にまた「誰もが他人事とは思えない」という決定的な理由もあるんじゃないかと。それこそスパイであればもう少し話は簡単だったんですよ。勿論自分たちの不利益にもなるけれども、しかし時にはそれは利益にもなったりするのだから。
ところが彼はそうではない。貴重な情報を握っていながらも、しかし、彼の身柄を手に入れても現状ではその情報を有効利用することさえできない。だからほとんど全ての国が、それこそ中国やロシアですらも、彼を持て余すことになる。もし、ここでスノーデンさんのような重要な国家機密に関わる人物を衆人環視の下ホイホイ受け入れてしまったら、いつ自分のところでも似たようなことが起きて(相手に同じように利用されて)しまうのか解ったものじゃない。
だから結局これってアメリカだけを笑える問題では絶対にないんですよね。まさに現代に生きる世界中の国家が抱える悩みでもある。


情報技術が進歩した先にある現代国家たちの抱えるジレンマ。技術進歩によってたった一人のテロリストが大きな破壊力をもったテロを実行できることが可能となったように、たった一人の跳ねっ返りによる情報漏洩が国家の機密を根こそぎ掘り返しかねない。
かつてのようなレトロな社会であれば、わずか一人の人間が扱える量や、そして発信できる情報量なんてたかがしれていたわけです。しかし、現在はまったくそうではない。もちろんそれを防ぐ為に、できる限り細分化した情報にのみ接することができるように情報区分を制限するやり方も可能でしょう。ただこうしたやり方って、いわゆる『縦割り』なやり方そのものでもあるわけで。まさに多くの私たち自身でも身を持って知っているように、それって効率的なやり方であるとは全く言えないわけです。だからこそ、進歩的な組織であるほど、できる限り内部では情報を共有するというやり方が推進されてきたわけです。
軍事機密漏えいの米兵士、「敵ほう助罪」の取り下げ認められず 写真1枚 国際ニュース:AFPBB News
ところがそのやり方に一石を投じたのが、同じようにウィキリークスに情報を渡したマニングさんであり、今回のスノーデンさんであるのでした。彼らはその矛盾を見事に明らかにした。その脆弱性と、現代の進歩した効率的な情報技術の恐ろしさを。彼らの振る舞いは打算に基づく行動ではなく、むしろ善意による行動であったからこそ、既存の防諜をあっさりとくぐり抜け、ローコストでその情報を世界中に公開した。
そしてそんな彼らの振る舞いにひたすら困惑する国家たち。
まぁやはりそれがあのアメリカで起きたというのは無関係ではないのだろうなぁと。最先端を走るアメリカで起きたこれは、おそらく他の国々でも今後起きるようになるでしょう。模倣犯から愉快犯まで。特にアメリカという国家にとっては、サイバー戦争と同じくらいのインパクトがあるんじゃないでしょうか。


かくして彼は――意識しているのかしていないのかはわかりませんけど――まさに現代の国家制度そのもの対する破壊者・挑戦者としてスポットライトを浴びることになる。「自覚なき無政府主義者」と言ってもいいかもしれません。
そりゃ世界中の国が支援に腰が引けてしまうのも無理はありませんよね。絶対にそれは他人事ではない。
偽悪的なウィキリークスのそれよりも、彼らはある意味ではもっと危険な存在と言えるでしょう。何しろ『善意』の下にそれを成しているのだから。彼は国家に忠実であるからこそ、この暴挙に打ってでた。まさに彼は正義のためならばと、打算や利益に基づかない地平で、つまり自らの身を惜しまない。
単純にスパイや金銭目的であれば、それを止めるのは既存のやり方で対応できないこともない。しかし、そんな善意と公正からの告発者をいったいどうやって抑止すればいいのか?


まさにアメリカという国だからこそ、よりこのお話は致命的な問題となりかねない。

 スノーデンの支持者は、潔く帰国すべきだと考えている。アメリカに戻ればスパイ防止法などで起訴される可能性が高いが、彼に同情的な陪審や裁判官に当たる可能性もなくはない。アメリカには、政府に盾突いた人々を応援する伝統がある。そもそも「建国の父」たち自身が反体制派だったのだ。

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そりゃアメリカさんも必死になってしまいますよね。