中国や、海軍は東に、陸軍は西に

はにはに


中国軍部隊、インド側支配地域侵入…5日で3回 : 国際 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)
ということでまた中国さんがまたインドとの国境でちょっかい――と言うにはかなり危険な火遊びですけど――かけているそうで。つい5月にも同じことをやって大騒動の挙句両国首相間で会談までしたにもかかわらず、先月の6月にも同じことをやって*1、そしてまた今月7月にも繰り返している。私たち日本人にも見慣れた風景と同じで、やっぱり確信犯(誤用の方)なのでしょうね。現在の中印国境紛争は、かつてのように復活しつつある。
西を目指す中国さんたち。
そして中国がやってくる - maukitiの日記
この辺りの構図については、先日の日記でも少し書きましたけど、ここ数年になって中国さんが私たちのよく知る海の側だけでなく、彼らの『裏庭』たる西側国境でも色々やっているのは、やっぱりパキスタンとの関係があったりするのだろうなぁと。それこそ元々中国さんにとって、少なくとも20世紀の間まではパキスタンはそれほど重要な国ではなかったわけで。下手にそこに手を出すとインドが激怒するのは確実なので、中国さんは一貫して距離を置いていたわけです。彼らはチベットさえ確保できれば満足していたし、むしろその地方において進出する可能性がある見られていたのは中国ではなく、伝統的にロシアの方がずっと恐れられていた程でした。


ところが21世紀になって、もっと言えば9・11以来、現地の地政学の状況はまったく変わってしまった。アメリカはイラクアフガニスタンと中東で泥沼に陥ったことで一刻も早くそこから抜け出したいと願うようになったし、中国自身はアメリカに比肩する超大国の一つとしての自信を確信するようになったし、そして中国の台頭を恐れる(私たち日本を筆頭に)周辺国は積極的に中国包囲網を形成とまではいかなくても、消極的な「NO」を中国に突きつけるようになってきている。
ついでにいうと変化が起きつつあるのは中国国内でも同様で、昨今の「春」たる革命ブームは当然中国国内におけるウイグルチベットにも波及しつつあるし、更にはダライラマさんの転生まで近づきつつある中で、そしておそらくもっとも重要な中国経済がついに終わりが見え始めている。
こうした諸々の要素が複雑に絡み合うことで、中国さんは東の海での振る舞いと同じように、西の陸の果てでも同様にその地での振る舞いを変化させつつある。パキスタンから中東への進出しようと。
棚上げされていたはずの国境の紛争が再び火がつき始めている。かつてあった中国の『微笑み外交』はもう終わりつつある。その意味ではやっぱり先日も書いたように、むしろ彼らがやっているのは「急に始めた」というよりはむしろ「復活させた」という方が正解なのだろうなぁと。



しかしまぁその中身としては、東にしろ西にしろ、現在やっているその中国さんちの戦略としてはどちらも基本的に違いはないんですよね。
中国の「海警局」発足の意味: 極東ブログ
この辺り極東ブログさんがかなり明確に指摘していますけども、つまり、相手に挑発的なちょっかいを掛けることで相手側の暴発を誘引しようとしている。

 こうした力のバランスが崩れたとき中国がしかけてくるのは、先日のロックオン(レーダー波照射)でよくわかるように、日本側としては正当防衛であれ武力行使の誘発である。中国はこれから、日本側が武力行使を迫るような危機をなんども演出するようなシーンを打ち出してくることになるだろう。
 日本側としては、ひたすら我慢に我慢を重ねて、戦前のように「もう我慢ならない」とならないようにするしかないだろう。なんともやりきれないが、より具体的には、この海域の力のバランスを台湾とともに強化していくしかない。ただし、その台湾の軍事力も早晩、中国軍と均衡が崩れることになりそうだ。日本が我慢に我慢を重ねていても、第一列島線での暴発は、台湾やフィリピン側で起きるかもしれない。

中国の「海警局」発足の意味: 極東ブログ

それはやっぱり海でも陸でも構図としては同じなのでしょう。そしてもし相手が先を手を出せば、国際社会の余計な非難を気にすることなく、堂々と「正義の」「懲罰の」戦いを始めることができる。
――といってももちろんそこで起きるのは全面戦争なんかではないでしょう。そんなことまず間違いなく中国共産党の偉い人たちでさえ望んでいない。おそらくその時に起きるのは、1962年の中印戦争であったような、彼らは短期的にある程度まで成果を挙げたところで一転してかなり譲歩した(なんて慈悲深い超大国である中国!)停戦案を示すことで、わずかな――しかし決定的な賞品を手に入れようとするのではないかなぁと。
三歩進んで二歩下がる。もちろん当事者となった時にはずっと大変なことになるでしょうけども、しかしその巧妙で狡猾なやり方を別の国家にやっているのを目の当たりにした時、私たち日本は一体どう対応すればいいのかと考えると、まぁこちらはこちらでものすごく悩んでしまいますよね。


いやぁ、ほんとめんどくさい国です。