アラブに冬

いつか来るぞ来るぞと言われていたものがついに本格的に到来へ。


7月の死者約1000人、5年間で最多 イラク 写真1枚 国際ニュース:AFPBB News
8月にイスラム圏で「アルカイダがテロ計画」、米が渡航警戒 写真1枚 国際ニュース:AFPBB News
モルシ派が退去令に反し抗議デモ、警官隊と衝突 エジプト 写真8枚 国際ニュース:AFPBB News
チュニジア 反政権デモで混乱拡大 NHKニュース
3カ国「同時」脱獄はアルカイダ復活の前触れ? | ワールド | 最新記事 | ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト
ということでかなりシャレにならない状況へと進みつつあるアラブさんちであります。特にイラクさんちはついに過去5年で最高の(一月あたり)死者数を記録してしまったそうで。地道に宗派対立を煽ってきたことがついに結実しつつあるイラクさんち。

 イラクの首都バグダッド(Baghdad)で取材に応じた47歳の男性は「治安改善のためには、(当局が)政治を立て直すべき。でも、この国での政治的解決には、奇跡が必要だ」と語った。

7月の死者約1000人、5年間で最多 イラク 写真1枚 国際ニュース:AFPBB News

この発言を聞くと色々絶望するしかありませんよね。
ともあれ、まぁ構図として『革命』が輸出されたのだから『内戦』もそりゃ輸出されるよね、という辺りでしょうか。民主革命の輸出から、イスラム革命の輸出へ。シリアさんちが泥沼に陥ることで、元々火種のあった周辺国にまでその対立の図式は周辺国にまで輸出されるようになっている。見事に『ソ連・アフガン戦争』と同じ道を辿りつつある現在。
『聖戦』の為に戦地へと出向き帰国する彼らによって、その武力闘争という概念そのものが移動するようになった。あのビンラディンさんをはじめとして、90年代以降から特にアラブの国々でそうした動きが盛り上がったのってそういう理由も言われていたりするんですよね。中近東の各地からアフガニスタンへ戦士として出向いた彼らが一種の成功体験としてそれを自国へ持ち帰ることで、その武力紛争というやり方そのものが輸出されていった。
だからこそあのアフガニスタン戦争が、ただのアメリカCIAによるムジャヒディンへの軍事訓練というだけでなく、その後のアラブ世界の運命=『聖戦主義』を決定付ける全ての元凶の一つとなるのです。
――そしてシリアでも同じ道を辿ることになる可能性は、おそらく、高い。


しかしまぁこれが単純に歴史の道を逆戻りしている、のかというとやっぱりそうではないのでしょう。春はいつか過ぎてしまうけれども、しかしまた廻ってくるものでもある。
民主主義を目指して、三歩進んでは二歩下がろう、七回転んで八回起きよう - maukitiの日記
以前の日記でも少し触れたお話ではありますが、あのヨーロッパさんちだってその民主主義国家への移行が簡単に済んだことなんてなかったのです。そんな自分たちの歴史を忘れて現状の『アラブの春』に一喜一憂しているから心底愉快な構図になってしまうんですよ。
それこそ第一次大戦前後までには、広義のヨーロッパ28カ国のほとんど全てで議会制度を運用していたにも関わらず、しかし第二次大戦直前の頃になるとその大半が独裁制へ移行しており、その時まで民主体制を維持していたのはわずか10カ国に過ぎなくなるのです。半分以上の国家が民主主義の道を後退させることになる。いやぁ素晴らしきヨーロッパにおける民主主義への道のりであります。
そりゃ『アラブの春』だって後退しないわけがありませんよね。