ポリティカル・コレクトネスの御旗の下に

偏見や差別を助長しない捜査。


米連邦地裁、ニューヨーク市警の職質手法に違憲判決 写真1枚 国際ニュース:AFPBB News
NY市警の「ストップ・アンド・フリスク」は違憲=米連邦地裁 - WSJ
NY市警の「呼び止め・身体検査」は違憲と米連邦地裁、9割が黒人、ヒスパニック系 - MSN産経ニュース
まぁなんというかアメリカさんちらしいお話ではありますよね。この辺のお話はそのうち冷泉先生辺りがコラムでネタにしてくれるんじゃないかなぁと期待していたら、まさかのお盆休み中だったというオチ。仕方ないので以下適当なお話。

 同判事はさらに、「市は地元の犯罪容疑者データに基づいて人種的に特徴のある集団を呼び止めの対象とすることで、間接的に人種差別的な方針を採用していた。この結果、憲法で保障されている平等な保護を受ける権利に違反して、黒人やヒスパニックが差別的に呼び止められることになった」と述べた。同判事は、証拠からマイノリティー(少数派)が「白人とは異なる扱いを受けている」ことが明らかになったと付け加えた。

NY市警の「ストップ・アンド・フリスク」は違憲=米連邦地裁 - WSJ

「データに基づいて人種的に特徴のある集団を呼び止めることは、「間接的」な人種差別である」だそうで。つまり、黒人の犯罪件数が多いからといって、あからさまに黒人ばかりに声を掛けるのは(間接的に)差別と見られても仕方のない行為である。
――なんというか、えーと、それを言っちゃおしまいですよね。
やはり日本に住んでいる身としては、容疑者データ(黒人の犯罪件数が最も多い)のに*1それを無視しろだなんて、素朴にそれはどうなのかと思う部分もありますが、しかし言っていることもまったく理解できないわけではありません。だって確かにそうした行為が行き着くの果ては「あいつらは黒人だから犯罪者に違いない」というあからさまな感情であるわけだから。


ただまぁ今回の件は、ただそれだけに収まらないお話なのでしょう。人種差別の要素があるとどうしてもそちらが大きく取り上げられてしまいますけども、むしろ実際に問題とされているのはそこではないのだと思います。つまり『ストップ・アンド・フリスク』というのは、ただでさえ「合理的理由」があれば礼状無しに捜索及び拘束できるというギリギリの手段なのに、その「合理的理由」の中に人種を入れてしまうことはそれはまぁちょっとやり過ぎではないのかと。
黒人(ヒスパニック)だから犯罪者だと疑うのは合理的である、というのはまぁ確かに一線を越えている感がありますよね。
同時に『人種差別』と『銃武装』を両手に装備することでめんどくささパワーが二倍に! - maukitiの日記
構図としては、先日の黒人少年の射殺事件のそれと近い所にある気がします。あの事件が単純に人種差別問題と言うよりは、むしろ銃の正当防衛に関する法律の問題であったように、今回の件もより問題視すべきなのは『ストップ・アンド・フリスク』という警察のやり方の方なのだろうなぁと。
おそらく、こうした人種的プロファイルに基づいた偏った捜査であっても、それが通常の(きちんと法によって抑制された)手続きであれば問題はなかったのかもしれない。しかし今回問題となっているのは、合衆国憲法の例外規定であるこの「礼状無し」の身体検査及び拘束であったわけで。


人種差別への疑いと、礼状主義への疑い。
――その二つの疑いが合体すると、なんとまぁ見事なほどに「偏見に満ち」そして「法を逸脱した」ポリスが爆誕してしまう。


間接的な人種差別であってもきちんとした法手続きを遵守していれば、あるいは法手続きを半ば無視したやり方であっても人種差別的なやり方を引き起こさなければ見逃されてきたかもしれない。
しかし今回は見事に二つが同時に重なり合ってしまっている。人種を合理的理由に含めてしまった。かくして『政治的正しさ』の為に彼らは立ち上がる所にまで至ってしまった。
今回の件が大騒動となってしまったのは結局そういう理由なのだろうなぁと。

*1:昨年起きた銃撃事件の容疑者の8割程度が黒人だったこともあり、実際に起きた暴力事件と「ストップ・アンド・フリスク」におけるマイノリティーの割合が大きく乖離(かいり)しているわけではない。【視線】訴えられたNY市警 ニューヨーク駐在編集委員・松浦肇+(1/3ページ) - MSN産経ニュース