まるで悪魔のような見えざる手

久々にタイムスリップ日記。


シリア北部の町をアルカイダ系勢力が占拠 写真5枚 国際ニュース:AFPBB News
ということでシリアさんちは軍事介入こそ見送られたものの武器支援などのお話は着々と進みつつある中で、何故か反体制派の内部分裂までもが進むというなんだか愉快な状況に。

【9月20日 AFP】トルコとの国境沿いにあるシリア北部アレッポ(Aleppo)県の町アザズ(Azaz)で18日、シリア反体制派の「自由シリア軍(Free Syrian Army、FSA)」の部隊と国際テロ組織アルカイダ(Al-Qaeda)系武装勢力イラク・レバントのイスラム国(Islamic State of Iraq and the Levant、ISIS)」との戦闘が発生し、数時間後にアルカイダ勢力が町を制圧、占拠した。

 地元住民によると、アザズで中心的な武装組織でFSA傘下の「北部の嵐(Northern Storm)」がISISに対し数時間にわたって応戦したが、19日時点で市内の全ての検問所にいるのはISISの戦闘員だという。「北部の嵐」がアザズから完全に撤退したのかどうかは定かでない。

シリア北部の町をアルカイダ系勢力が占拠 写真5枚 国際ニュース:AFPBB News

まぁ構図としては解らないお話ではないんですよね。つまり、欧米の側からかなり危険視されている――ついでに言えば彼ら自身も欧米を敵視しているのでお互い様なんですが――アルカイダ系の武装勢力は、欧米諸国からの軍事介入や武器支援などの援助が大きくなればなるほど排除されていくのは目に見えているわけで。だったらその前に、こうしてギリギリのタイミングで回避もされたし、先に主導権を握っておこうとこうして内部分裂が激化している。かといってアサドさんの政府軍側も着々と支援が続く反政府軍に勝ちきるだけの戦力も無い。
不毛な構図と言ってしまってはそれまでではありますが、しかしこうした双方のぐだぐだこそが、現状のシリアの地獄を生み出す最大の要因でもあるわけで。どちらか一方が圧倒的に強ければそれはそれで――良くも悪くも――あっさり終わっていたはずなのに。ところが見事に、その均衡は保たれてしまっている。


まぁこの構図というのは実際の所、ずっと指摘され続けてもいるように、アメリカ及び私たちのような傍観者からすればそれなりに都合のいい状態でもあるんですよね。苦しむのはシリア国民と周辺国であるだけで、部外者からすればどこまでいっても他人事の顔をしていられるというのは間違っていない。正直このままどちらが勝っても戦後のビジョンがまったく見えないし、そして不満を抱えるイスラム過激派たちの温床ともなっている現状、ならばこのまま「限定された」地獄が続く方が都合がいいではないか、なんて。
まるで『虐殺器官』にあったような戦争状況。世界の一部に生贄のような戦場があれば、少なくとも世界の他地域では平和で居られるのだ。
――ただ、そんな物語よりも現実が悲惨なのは、別にそんな『戦争を生み出す法則』なんてものがあるわけでもなくて、ただ単純に外国からの介入と内部パワーバランスと勢力争いの果てにひたすら内戦が長期化している構造というのは、まぁ現実の方がずっと救いようがないとしか言い様がありませんよね。まるで誰かが図っているかのように、内戦がひたすらぐだぐだと続いていく構図。


最早完全に宗派対立の様相を呈するようになってしまったシリアの内戦は、おそらく政府軍にしろ反政府軍にしろどちらが勝っても、その後にやってくるのは虐殺かそれに近いような弾圧が始まるというのはかなり可能性として高いでしょう。
シリア内戦の記憶が辿りつく場所 - maukitiの日記
そして更には以前の日記でも書いたように、シリアでの内戦が終わると言うことは、その戦争の記憶を抱えた兵士たちが再び元の国へと拡散していくという意味でもある。
しかし、おそらく彼らがシリアで戦い続けてくれる限り、そうした恐るべき未来はやってこない。今はベストではないにしろ、ベターではある。そんな人々の内心をまるで反映するかのように、まるで見えざる手に導かれるように、ひたすら泥沼化を続けるシリア。まぁ陰謀論の一つも言いたくなる気持ちは解らなくはありませんよね。


がんばれシリア。