『ノーベル平和賞』によって証明された化学兵器による抑止力

今回の件が逆説的に証明している『平和』について。二重の意味で正しい平和賞。




2013年ノーベル平和賞は「化学兵器禁止機関」、シリアに査察団派遣 写真1枚 国際ニュース:AFPBB News
ということで今年のノーベル平和賞は『化学兵器禁止機関』だったそうで。おめでとうおめでとう。まぁ「すわアメリカの軍事介入だ」という流れを止めたという意味では正しく平和に貢献している人びとを後押ししている適切な授賞であるとは言えるのかもしれません。一方で、アサド政権による武力攻撃の犠牲者達には何の意味も無い『平和』ではあるんですけど。その意味で反体制派の人たちが揃って激おこ状態なのは無理もありませんよね、だってつまりそれはアサド政権にとっても『平和』を意味する状況でもあるんだから。
彼ら『化学兵器禁止機関』が登場する事で、確かに国際社会とアサド政権にとっては正しく『平和』を達成した。しかし反体制派にとってそれを『平和』と呼ぶなんてまったく冗談ではない。
人類社会における永遠の対立構造 - maukitiの日記
でも先日の日記でも書いたようにそれも仕方ないよね。結局のところ、誰かの平和は、別の誰かにとっての不正義でしかないのだから。万人の万人による平和状態なんて幻想でしかない。ならば、最もその平和による恩恵の授受者が最大多数になるように『平和』をデザインして何が悪いのだ? なんて。
そして正しく、アサド政権による化学兵器の犠牲者たち――というよりは現在進行形で続くより多くの通常兵器による死傷者たちは、それ以外の圧倒的大多数であるシリア内戦の部外者たちにとっての平和の為の礎となった。尊い犠牲だったよね。おわり。



ともあれ今回の構図は、おそらく、今後の国際関係にも影響していくことでしょう。

同賞委員会のトルビョルン・ヤーグラン(Thorbjoern Jagland)委員長は、「化学兵器全廃に向けた広範囲の活動」が高く評価された、「再び化学兵器が使われたシリアの現状が、そうした兵器の排除へ向けた努力を高める必要性を強調している」と声明で述べた。(c)AFP

2013年ノーベル平和賞は「化学兵器禁止機関」、シリアに査察団派遣 写真1枚 国際ニュース:AFPBB News

「そうした兵器の排除へ向けた努力を高める必要性を強調している」なんて仰っていますけども、今回の件で証明されたのは、身も蓋もなく化学兵器による『抑止力』の存在価値でもあるわけで。「排除の必要性」どころか、むしろ「所持する事の必要性」の方が強調されていますよね。
つまり、いざという時に化学兵器は十分に「役に立つ」ということが実証された。シリアなんてまさにその為にこそ、世界でも有数の化学兵器大国であり続けたわけで。対イスラエル最後の切り札。翻って今回、もし外部からの影響を避けられない時、そのカードを切る――単純に使用するのではなくてそれを廃棄しましょうと呼びかける――ことで、正しく抑止力として機能させた。


いやぁ化学兵器があって良かったよね。使って良し、廃棄して良し。万能の兵器であります。
反感を買うと解かっていながらも敢えて使うことでその価値を引き上げ、そして今度は一転して廃棄するポーズを見せることでその印象のギャップを操る事で、状況を有利な方へと導くことを可能とした。まさに正しく国家安全保障における『抑止力』として機能することを、ノーベル平和賞という形で証明された。




さて、今回の顛末を見て所謂『ならず者国家』の皆さんは一体どう思うでしょうね?