セン閣上空でつかまえて

一昨日の日記でなんか大前提をぶっとばしているなぁと思ったのでその補足的な日記。


似て非なる中国の“識別圏”:日経ビジネスオンライン
大騒動の防空識別圏のお話についてもう少し。その設定が意味する本質についての、専門家の解説。

鈴置:Bさんが予想されていたように11月28日、中国が「日本だって44年も前から防空識別圏ADIZ)を設定している。我が国に対し文句を言う権利はない」と言い出しました。

B:いかにも中国らしい、へ理屈です。中国の“防空識別圏”とは日本や西側のそれとは「似て非なるもの」なのです。なのに敢えて同じ名称を使うことにより、日本や関係国を誤魔化そう、揺さぶろうとしているのです。

 専門家ならすぐに分かることですが、中国の主張は「識別圏の設定」ではなく「領空の拡張」です。中国の“防空識別圏”と、日本などのそれとは全く別物であることをまず理解しておく必要があります。

似て非なる中国の“識別圏”:日経ビジネスオンライン

まぁこの辺りは当初から言われていたお話でもあるんですよね。
本来『防空識別圏』というのは領空に侵入「しそうな」航空機に対して予めフライトプランの提供を求めるものであるわけで。根本的にそこは領空ではないんですよ。だから自身の領空外である航空機には、本来、その範囲は及ばない。それでも航空機という速度を持つ特性から、予めその予定を求めることがある種の例外として認められているわけですよね。お互いに余計なトラブルを招かないためにこそ。
――ところが上記リンク先でも言われているように、中国さんちの要求はその一線を越えちゃっている。

 一方、中国国防省はその“防空識別圏”に関し「この空域に入る航空機は中国政府の指示に従わなければならない」と言っています。具体的には、以下の通りです。

防空識別圏は中国国防相が管理する。
・圏内を飛行する航空機は飛行計画を中国外務省または航空当局に提出する義務がある。
・圏内の飛行機は国防省の指令に従わなければならない。
・指令を拒み、従わない航空機に対し、中国は防御的な緊急措置を講じる。

似て非なる中国の“識別圏”:日経ビジネスオンライン

まぁこれって既存の防空識別圏ADIZとはやっぱり違うモノですよね。かくしてこれは一方的な、領空の延長=国家主権の延長、とさえ見られているのです。そしてそれは引いては戦後世界における最も根本的なルールの一つである『航行の自由』の侵害ですらある。
【中国防空識別圏】比外相「航行の自由を侵害」 - MSN産経ニュース
私たち日本としてはどうしても「対日本」および「対尖閣」という所に目が行ってしまいますけども、まぁぶっちゃけ日本と中国の摩擦なんて他人事で勘弁してくれ位に思っている他国の皆さんが、それでも今回のことを安易に看過できないのはこうした理由があるからなんですよね。各国領空・領海「外」にある公海・公空での自由を、そんな一方的な宣言で事実上阻害することを認めるわけには絶対にいかない。
故に中国さんちの振る舞いは、(ついに)既存秩序の挑戦している、という所までに語られるようになってしまっているわけで。そしてそれはその既存秩序の守護者たるアメリカへの挑戦でもある。中国だけを特別扱いするわけにはいかないアメリカと、自分は特別扱いされるべきだと確信している中国。
かくしてこのイベントは、対日本というよりは徹頭徹尾対米なお話であるのです。




まぁ問題は、中国さんちがどこまで解っていてやっているのか、というあたりなのかなぁと。交渉の基本でもある「最初に吹っかけて妥協点をさぐる」というのはよくあるやり方ではありますけども、でも今回の件はあまりにも要求が大きすぎだよなぁと。
ということで僕たち日本は水をまく、じゃなかった応援することしかできないのでがんばれアメリカ。