古き良きゴーリズム的風景の復活?

『冬』になり、うれしそうに裏庭をかけまわるフランス。


フランスとアフリカ連合、中央アフリカへの派遣部隊を増強 写真2枚 国際ニュース:AFPBB News
そういえばフランスさんちが再び北・中央アフリカ辺りに介入を始めたそうで。いやぁ内政はともかく最近のフランスさんちは元気ですよね。何かいいことでもあったのかい?
――というと、まぁ実際あったのだろうなぁと。

 オランド大統領は、「女性をレイプしたり、病院の患者を殺害したりするなど、まるでギャングのような行動をしている民兵組織の武装解除」が仏軍とアフリカ部隊の任務になるだろうとした上で「現在行われている残虐行為や大量虐殺をすぐにやめさせることができると私は信じている」と述べるとともに、「再び国を安定させ、適切な時期に自由で民主的な選挙を実施すること」を長期的な目標として示した。

フランスとアフリカ連合、中央アフリカへの派遣部隊を増強 写真2枚 国際ニュース:AFPBB News

前大統領だったサルコジさんよりも積極的なオランドさん。でもフランスさんちの日常風景といってしまえばその通りでもあるんですよね。むしろ歴史的に見てレアだったのは親米なサルコジさん時代であり、オランドさんになって社会党らしい伝統的なフランスの復活へ。日本でも(例のイラク戦争の反対の姿勢とかを引いて)フランスの外交戦略を称賛したりしますけども、しかしそもそもフランスって単純に反米や平和主義という括りには収まらない戦略を持っているんですよね。
懐かしのド・ゴール主義=ゴーリズムな風景。この辺は右とか左とか関係なく、まさに戦後フランスの伝統的な国家戦略そのものであるのです。


大戦後に圧倒的な超大国となりヨーロッパの守護者ともなったアメリカに対し、それでもフランスが対抗するための、アメリカでもソ連でもない第三の道。世界に冠たる偉大なフランスを維持するための独自の外交・安全保障戦略。それこそ前回の社会党出身の大統領であったミッテランさんの手によって、そんなゴーリズムを冷戦以後の世界に合うように焼き直ししたんですよね。つまり「欧州連合の推進」「(反米とは言わないまでの)対アメリカからの独自路線」そして「第三世界の盟主」を追及しよう、と。
特に最後の第三世界の旗手たらんとする戦略は、単純に経済や軍事などの交流だけでなく、フランスが重視するソフトパワー戦略――フランス語やフランス文化の普及――の維持においても重要であるわけで。まぁそもそも論で言えば、フランスといえば大英帝国に次ぐ植民地帝国だったので当然の帰結ではあるのでしょう。だからこそ彼らフランスは伝統的に、一面では傲慢であるとさえ言えてしまう程に、先進国としての「(旧植民地などの)貧しい国に対する責任」を重視する国家でもあるんですよね。実際フランスさんちはODAなども絶対額はともかくとして、比率でいえば、世界でも最も大きな比率で支出している。
――そしてもちろん、カネだけでなく、手も。
ところがこうしたフランスの『(新)ゴーリズム戦略』は、しかしポスト冷戦の世界においては、悲しいことに、あまり上手くいかなかった。
今になって歴史を振り返れば当然の帰結のように見えてしまいますけども、むしろアメリカ一強となったことで、相対的にフランスの弱さが露呈した。湾岸戦争での失態(フセインに上手く乗せられたフランス)やバルカンの危機(結局アメリカの軍事力に頼らなければ何もできなかった)などなど。冷戦が終わることでようやくヨーロッパで大きな顔をしていたアメリカを締め出すことができると思いきや、冷戦によって「冷凍」されていた地域紛争が解凍されることでむしろアメリカへの依存度が高まることになってしまった。そんなミッテランさんやシラクさんのフランス独自外交の限界の下に、サルコジさんのユニークな親米戦略が生まれたのでした。
いやぁ悲しいお話ですよね。



翻って2013年も終わりつつある現在。これまで日記でも何度か書いてきたように、アメリカは冷戦後の世界においてクリントンさん時代から元来あった「世界からの撤退」という流れがようやく、対テロ戦争ののめり込みそして疲れる果てることで、再び大きな流れとなってきたわけであります。
――ということは、つまり、それと同じく「フランス的例外」も今こそ復活させるチャンスかもしれない、なんて。
中でも『アラブの春』による北アフリカ周辺での混乱の波及はそれはもうひどいことになっているわけで。まさにそこはフランス旧植民地に近い国家利益の中心でもあるので、タイミングだけでなく場所もいい。フランスは今こそ旧植民地の、フランス共同体*1の、第三世界の盟主たるポジションを確立するのである。
「行こう祖国の子らよ、栄光の日が来た!」なんて。


……まぁもちろん実際にはどうかなんかはさっぱり解りませんけども、しかし昨今のマリ介入などから続いているフランスさんちのがんばりっぷりを見ると、そういうことを考えているのかなぁと少し考えたりします。アメリカがブッシュさん時代の例外から元のコースに戻りつつあるように、フランスもサルコジさん時代の例外から元のコースに戻りつつあるのかもしれない。もちろん私たち日本のある東アジアでもアメリカの動向について色々ありますけども、やっぱりそれはヨーロッパでも同じなのだろうなぁと。
フランスの夢、ゴーリズム戦略の復活。


みなさんはいかがお考えでしょうか?

*1:イギリスのコモンウェルスに近いものの、それよりは緩やかな旧植民地を含む連合。