野蛮人とは停戦協定も結べない

すばらしきボーダレスな世界。


シリア内戦、反体制派3派が連合してISILと激しい戦闘 写真2枚 国際ニュース:AFPBB News
ということで、これまで3年近く続き死者13万人を数えたシリアさんちのグダグダな大騒動が、また新展開を迎えつつあるそうで。

【1月5日 AFP】シリアの反体制活動家らは4日、一部の反体制派組織が連合して国際テロ組織アルカイダ(Al-Qaeda)系イスラム武装組織「イラク・レバント(地中海東岸地域)のイスラム国(Islamic State of Iraq and the Levant、ISIL)」の戦闘員を拘束したり殺害したりする新たな「革命」に乗り出したと語った。反体制活動家らは、ISILはバッシャール・アサドBashar al-Assad)シリア大統領よりもひどい悪事を働いているとしている。

シリア内戦、反体制派3派が連合してISILと激しい戦闘 写真2枚 国際ニュース:AFPBB News

反体制派の両翼となっていた、自由シリア軍アルカイダ系の武装勢力との決裂。「敵の敵は味方だ!」理論の終わり。
――でもまぁ約束されていた破綻ではありますよね。
それこそ猫の手も借りたいとばかりにアサド政府軍に対抗するためのかりそめの大同盟だったのは元より衆知の事実でもあったわけで。だからこうして破綻するのもいつも通りの展開と言えばその通りなんですよね。
ビンラディンさんを源流とする「アルカイダ系」と称される彼らの基本戦略。つまり、政情不安なところに武装勢力として介入することで、その後の国家運営への影響力を確保し最終目的であるイスラム国家の樹立を果たそうとする人びと。それはまぁアフガニスタンでもボスニアでもイラクでも――そして現在のシリアでも、彼らは基本的にはまぁ同じことを続けてきたわけであります。


で、問題は何故この両者の決裂が「今」だったのか、という点にこそあるわけで。まぁ単純に事実を見れば、あまりにも仲違いが過ぎたからといってしまうと身も蓋もないんですけど。
米 シリア和平会議にイラン参加容認か NHKニュース
http://sankei.jp.msn.com/world/news/140107/mds14010700470001-n1.htm
ともあれ、この辺りの背景に繋がるのがジュネーブで予定されているシリア和平会議だったりするのかなぁと。
反体制派内部でもかなり(少なくとも短期の)和平交渉に乗り気であるのかもしれない。その帰結がそんな停戦に猛烈に反対しそうな過激派のパージであると。だって国外からの武装勢力である彼らにとっては「シリア国内」がどうなろうと基本的にはどうでもいいんだから。しかし元々国内にあった反体制派にとっては絶対にそんなことない。誰がどう見ても終わりの見えない内戦なのだし。
当たり前の話ではありますが和平・停戦協定って双方が矛を収めることをある程度以上の水準で「確約」しなければ意味をなさないんですよね。ついでにいえば、その仲介をする第三者たちは、その双方の紛争当事者たちに停戦を強制できるだけの影響力がなければ意味がない。アサド政権側で言えばそれはロシアやイランであるし、そして反体制側はサウジや(そしてかなり影響力は薄れているにしても)アメリカなど欧米諸国がそれを担うことになるのでしょう。
シリア反体制派からのISILのパージというのは、こうした背景があったりするのかなぁと素人考えながら思ったりします。和平調停の環境づくり。
まぁだからといって必ずしもうまくいくとはやっぱり限らないんですけども。現状で和平を目指すと言うことは、この内線状況の固定化であり、やっぱりそれはシリアの国家分断に至るということに他ならないわけだし。どう見ても茨の道であります。実際、シリアの分裂(ついでに言えば周辺地域すべてを巻き込んでの国境の変化)というのはオプションとして内戦当初から語られ続けてきたお話ではありますが、まさか現実の選択肢として浮上することになるとはなぁと。
でもまぁこのまま――それこそ民間人を中心に――死体を積み上げ続けるよりかはやっぱりマシなのかもしれませんよね。だったら何でこんな不毛な戦い始めちゃったんだって、そもそも論も言いたくもなりますけど。



イラクで治安部隊がアルカイダ系組織と戦闘、死者100人以上 写真2枚 国際ニュース:AFPBB News
レバノンのベイルート南部で爆発、4人死亡 ヒズボラ狙った攻撃か 写真3枚 国際ニュース:AFPBB News
一方で、そんな風にシリア反体制派からそんなパージされそうな彼らは既成事実――シリアとイラクの国境地帯に自分たちの勢力圏を確保しようと大暴れであります。シリアの次は再びイラクで。イスラム国家建設のためにがんばる人びと。ここが正念場なのでしょうね。
まさに一部の人たちがいうように、彼らには国境など関係なく行動する。そして現実にシリアとイラク間の国境は事実上消失している。「善き」ものが国境を越えて動くのならば、その反対のモノだって例外じゃない。
いやぁグローバルでボーダレスな世界ってすばらしいですよね。