ノーと言いまくれる議会

厳密な権力分立の果てにあるもの。



オバマのTPP交渉に立ちはだかる米議会 | ビジネス | 最新記事 | ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト
そういえば今年の一般教書演説での取り扱いも小さくて「なんとなくダメそう」という共通認識になりつつあるのがアメリカさんちとの――より正確に言えばオバマ政権とのTPPを巡る議論の現状であります。

 だが、TPPの受け入れが最も難しそうなのはアメリカだ。「自由貿易派の共和党」対「保護主義民主党」という在来の構図は崩れ、今や乱戦状態。両党とも、自由貿易嫌いの労働組合や環境団体による反対運動の行方を慎重に見守っている。

 昨年夏には下院共和党の新人議員35人が通商代表部のフロマン代表に書簡を送り、TPPとTPAへの支持を表明した。

 しかし11月半ばには、労組の影響力が強い地域から選出の共和党議員たちがオバマ嫌いのティーパーティー派と組んでTPA反対を表明。これに下院民主党議員151人が同調する事態となった。一方で下院歳入委員会に属する民主党のレビン議員が独自のTPA案を準備しているのも、議会内で意見が割れていることの証しだろう。

 総合すると、オバマ政権の貿易政策に最も強く反対しているのは民主党議員や伝統的支持基盤である労組だ。だからTPAを手に入れるには共和党の協力を仰ぐしかない。果たして必要な賛成票を集められるか。政権の本気度が試されるところだ。

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だめそう。
ともあれ、この辺はずっとうちでも書いてきたお話ではあって、
TPP交渉において日本の交渉力云々と同じくらい重要なもの - maukitiの日記
結局このTPPをめぐる天王山は日本がどうこうというよりは、まぁ悲しいことにアメリカ大統領と米国議会の決着こそが最大のヤマ場となるわけですよね。私たちが必死に熱意をもって喧々諤々と議論しても、その争いは末節でしかない。もし行政府の側が大きな交渉権を握ればかなり進展するだろうし、逆に議会が拒否すれば――ぶっちゃけ日本がどうこう言ってもほとんど進展しない。
それこそアメリカという国家の歴史を通じて見られるのが、大統領が多国間の共同プロセスに参加意欲を示しては議会がそれを拒否してきた、という構図であるわけですよね。上院の権限たる『条約』や『通商交渉』の承認は上院の三分の二以上の賛成で批准されなければならないものの、しかしそれはもう明らかに高すぎるハードルなのです。
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その勢力図の歴史を見れば解るように、せいぜい過半数とれれば御の字であって、三分の二なんて絶対に超党派の賛成がなければまとまらない。


例えば、現在でもしばしばアメリカ一国主義的行動への非難の代表例として語られる、ブッシュ前大統領の『京都議定書』への参加拒否でありますけども、そもそもその二年前の1997年のクリントンさん時代の上院で既に「満場一致」で否決されていたんですよね。もちろんその後の子ブッシュ大統領自身にやる気がなかったというのも事実であるんでしょうけど、ただこうした満場一致な状況から三分の二の賛成の為に、いくらアメリカ大統領と言えど何か出来ていたのかというと、まぁ不可能だろうと言うしかありませんよね。
こうした構図はそれはもう歴史の常であるわけで。古くはウィルソンさんの1919年の国際連盟加盟の否決や、あるいはGATTの設立経緯(連邦議会の承認を避けるために迂回策をとった)やWTOへの移行の際のぐだぐだなどなど。米国大統領は大抵の場合、何らかの国際条約や自由貿易に賛成であったものの、しかしほとんどの場合でそれは連邦議会から強硬な反対にあってきた。


そして翻って現在、かつての大統領とまったく同じく――もちろんその思い入れには強弱あるんだけど――自身は基本的には賛成であるものの、しかし議会からの強硬な反対に直面するオバマさん。
――ここでオバマさんが大統領の「指導力」を発揮して一発逆転できるかというと、……まぁそれも怪しいよなぁと。少なくとも彼がNAFTAの時のブッシュ父さんやクリントンさんのようにやる気があるようにはとても見えない。


ということで、もし日本においてどうしてもTPPに反対したいのならば、日本政府にそれを訴えるよりも実はあちらの連邦議会を応援する方がずっと効果的だったりするし、逆にそれに賛成であるのならばオバマさんに頑張ってもらわなければどうしようもない、という構図だったりするのでした。
アメリカが連邦国家であることの証明、強力すぎる議会について。まぁ私たち日本でも色々と政治の構造問題が言われていたりしますけども、あちらはあちらで色々と苦労の多そうな制度ではありますよね。


がんばれオバマさん。