サンクトペテルブルクから8年

初開催だけで次はなかった。


クローズアップ2014:G7、ロシア排除 国際枠組み、変容 - 毎日新聞
ということで、ほんとにロシアをG8から追い出してしまったG7の皆さんであります。パパブッシュがゲスト招待し、クリントンで正式加盟し、子ブッシュでついに議長国となり、オバマで追い出される。20年近いG8とロシアの歴史。怒涛の展開で笑えます。

G7首脳は24日、オランダ・ハーグの首相公邸で、半径3メートルほどのテーブルに「ひざ詰め」で座り、ロシアの扱いを協議した。首脳同士の距離を縮める演出は、G7の「結束」にこだわるオバマ米大統領の意向に沿ったとされる。

 「ロシアを政治的に孤立させることができた」。米政府高官は、ロシアをG8から当面排除することを決めたG7の「ハーグ宣言」をこう評価する。ハーグ宣言は、ロシアがクリミア半島編入した状態を維持したり、ウクライナ東部に軍事侵攻したりするなど「事態をエスカレート」させた場合、ロシア経済に「重大な影響を与える」経済制裁を「最大級の鉄つい」(同高官)として準備することで合意。「結束してロシアに代償を払わせる」(オバマ大統領)目標が共有された。

 G7は「意味のある議論ができる環境が戻るまで」として永久追放はせず、復帰に余地を残した。しかし来年のサミット主催国となっているドイツのメルケル首相は「そんな環境はない」と断言。ロシアの排除は長期化し、G7が固定化しそうな様相を見せている。

クローズアップ2014:G7、ロシア排除 国際枠組み、変容 - 毎日新聞

まぁぶっちゃけかなり「面子」の問題もあったのだろうなぁとは思う所ではあるんですよね。実際ロシア――というか特にプーチンさんのその民主主義軽視の政治手法への反発から「ロシアなんてさっさと追い出せ!」という声はここ数年の間でも常にくすぶっていたわけで。
単に制裁云々というよりも、今回のロシアはその本質的な存在意義を傷つけてしまったからこそ。


そもそも『世界政府』なんて揶揄されることも多いG8=主要国首脳会議――ロシア参加前(とても先進国とは言えないロシアの参加によって改名)には先進国首脳会議と呼ばれた集団ではありますけども、その大事な参加資格要件というのが「先進国」というだけでなくてきちんと「民主主義が確立した国」であることが重要な条件であるのです。
その首脳会議の本質的な意味と言えば、つまり世界における『「善き」国家統治と国際行動の諸原則の方向性』に参加国が同意していることを象徴することでありました。その意味でそれを『世界政府』だと批判する声はそれなりに正しかったりもするんですよね。もちろんその声明には何の拘束力もないけれども、しかし、世界が目指すべき大きな流れや方向性を決定付けていたから。
――だからこそ、あのロシアの正式参加をめぐる議論にはそれはもう紆余曲折があった。
――そしてだからこそ、そこにロシアを巻き込むことは大きな利益があるとも(少なくとも10年前の当時には)考えられていた。
ところがどっこいロシアさんちは今回のウクライナの危機で、見事に――「傲慢にも欧米の彼らが考える」と前置きするかどうかはさて置き――現在の国際秩序の根幹とも言うべき方針をひっくり返した。民主主義という原則を逆手にとり、領土を奪い取った。
本来ならばG8こそが、そうした原則を維持していくことを確認し同意したことを象徴するはずだったのにね。そりゃロシアさんちも追い出されてしまいますわ。


ただ、やっぱり上記でも触れたように「G8にロシアを置き続ける」ことのメリットはやっぱりあったりするのです。少なくともロシアをこちら側に置いておけばそのG8が象徴する「あるべき世界の合意」に巻き込むことができるから。ロシアを無視して国際秩序を作り上げるなんてことはどう考えても不可能だから。
http://sankei.jp.msn.com/world/news/140327/erp14032709130005-n1.htm
そしてまた、ロシアをG8から追い出すということは、それは必ずロシアのナショナリズムに火をつけることになりかねないから。

 ロシアの独立系民間世論調査機関レバダ・センターが26日公表した調査結果によると、プーチン大統領の支持率が80%と、2012年5月に通算3期目の大統領に就任して以来、最高となった。クリミア編入による支持率の上昇が、さらに続いていることが分かった。

 調査は「大統領の仕事をおおむね評価するか」との設問で、今月21〜24日に実施。不支持は18%だった。

 調査初日の21日に大統領はウクライナ南部クリミアの編入手続き完了を宣言。調査は、25日の先進7カ国(G7)首脳会議でロシアが主要国(G8)から一時的に排除される可能性が伝えられた時期とも重なる。

 ロシア国民がG8メンバーの地位を犠牲にしても、クリミア編入を評価している実態を示すとみられる。

http://sankei.jp.msn.com/world/news/140327/erp14032709130005-n1.htm

プーチンさんが尚も強気なのは、こうした国内支持がまだそれなりに――少なくともアメリカの末期イラク戦争以上にはあったりするからなんですよね。もちろん長期的に経済的苦境が強まればその数字も逆転するかもしれない。しかし、現在のところはまだ悪影響はほとんど出ていない。
おそらく、今回の「G8からの追放」というニュースもそうしたロシア国民を更に煽り、また同時にプーチンさんの政治的手法をより確固たるものにする効果があったりするのでしょう。そして苦境に陥るのは、むしろ地道にロシアで民主化運動を続ける人たちや、あるいはロシアで弾圧され話題となっているLGBTな人たちだっていう救えないオチ。




この他にもG20との関係性があったりして、私たち日本も参加しているとはいえ色々大変そうなG8、これからはまたG7であります。まぁ良い面を見れば、更に分裂状況が深まりそうなG20とは対照的に、ロシアさんちを追い出したことで比較的一致団結の機運が生まれやすくなったG7、という見方もできるかもしれませんけど。
がんばれG7。