経済格差がもたらす「分裂する社会」

失われる連帯。


NHK クローズアップ現代
この辺のお話は、しばしば不平等とセットで指摘され続けてきたお話ではありますよね。最早貧乏人たちとは同じ「市民」であるとは考えなくなっていく金持ちたち。

アメリカの自治体で今、異変が起きている。「州」の下の行政区分である「郡」から“独立”するCITY=「市」が相次いでいるのだ。独立運動の中心は高級住宅地に住む富裕層。その動機は「所得の再分配」に対する不満と「効率の悪い政府」への反発だ。彼らは、自分たちで「市」の境界線を決め、州議会を動かし、住民投票を実施。法にのっとり独立を成し遂げている。誕生した「市」では、ほとんどの業務を民間企業に委託。運営コストを半分以下に抑え、減税に向けて動き出している。一方、税収が少なくなった「郡」では、福祉サービスの予算を削減。貧困層が打撃を受けている。「税」や「公共サービス」のあり方を巡り分断が進むアメリカ社会。その行方を展望する。

NHK クローズアップ現代

貧者と富者の決定的な格差がもたらす分裂について。
以前日記でも書いたような気がしますけども、私たちが所謂「不平等」を真剣に恐れなければいけない理由は、単純にそうした貧困者たちの苦境を思ってというだけでなく、このような社会の分裂への第一歩でもあるからなわけで。富者たちは日々の生活の中で、多くの人々が出会う公共機関や施設を使うことが少なくなり、その税金を無駄だと考えるようになる。そうすると次に起きるのは、そうした公共サービスの質の低下であり、更に富者たちは離れていくという悪循環。
それは単純に貧者たちを見捨てたと言うだけでなくて、同時にまた富者たちの不満をあまりにも軽視し過ぎた帰結でもあります。ただひたすらに貧者たちへ再配分をするだけじゃ、やっぱりそれを長期的に持続していくことは難しいんですよ。
もちろん「だから独立するのは正しい」と言いたいわけでないものの、しかし、金持ちたちだけが唯一の悪者というわけでもない。貧困層を完全に見捨てることが正しくないように、かといって富裕層の不満を完全に無視することも正しいとは言えないのです。
――故にこれは地方行政の失敗でもあるわけで。いかにしてその両者の溝を埋める公共領域を確保するか。連帯感のある市民社会を生み出すことでそれを抑止する以外にない。そうした考えに基づく行政政策はこれから益々重要になっていくのでしょう。


そして、そうした分裂の抑制に失敗しつつある姿が上記のようにアメリカにある。その両者の接点が失われ続けた果てにある社会。
まぁやっぱり他人事では決してないのでしょうね。