too bigな中国さんち

昔から言われる、意図ではなく能力の問題。


中国船がベトナム巡視船に体当たり、南シナ海の石油掘削めぐり 写真1枚 国際ニュース:AFPBB News
UPDATE 1-中国とベトナム、南シナ海で船舶衝突 フィリピンは中国船拿捕| マネーニュース| Reuters
ということで、ベトナムにフィリピンに南シナ海は大騒動であります。台頭する中国と周辺国の軋轢。この構図が半ば運命的なのは、単純に中国「だけ」が大きく成長し台頭したから、という単純な構図じゃないんですよね。むしろ中国以外の周辺国も同じく経済成長を続けていることで、その中国と同じく、彼らもまた当然守るべき資産と自負心を大きくさせている。少なくとも米中という対立構造で見れば「時間」は中国の味方ではあるものの、しかし中国と東南アジア諸国という括りで見ると必ずしもそうとは言い切れない要素があったりする。
ということでライバルである米国からだけでなく、(弱小国であるはずの)周辺国からも自らを大国として扱われない=ひれ伏さないベトナムやフィリピンなどに苛立つ中国さんち。

【5月8日 AFP】ベトナム政府は7日、南シナ海(South China Sea)の係争海域で、中国の海底油田掘削装置を護衛する複数の中国船がベトナムの巡視船に放水砲での攻撃や意図的な衝突を繰り返し、6人が負傷したと発表した。

中国当局は先週、中国とベトナムが領有権を争う南シナ海西沙諸島(英語名:パラセル諸島、Paracel Islands)近海で石油掘削活動を行うとして、掘削装置の移動と航行警告を一方的に通告した。ベトナムは、中国側の決定は「違法」だと反発。掘削装置の撤去を要求するとともに現場海域に船舶を派遣し、両国間で緊張が高まっている。

中国船がベトナム巡視船に体当たり、南シナ海の石油掘削めぐり 写真1枚 国際ニュース:AFPBB News

といっても別に現代中国「だけ」が殊更に悪質であると言うこともできないでしょう。まぁ多分に時代遅れだという点は事実ではあるんですけど。
つまり、中国自身が「平和的台頭」と呼ぶそれは歴史的に見て珍しいものだったというとそうではない。アメリカにしろ大日本帝国にしろ旧ヨーロッパの帝国たち――引いてはウクライナをめぐるロシアと欧州連合にしろ、台頭する勢力はみんな同じことを言うのです。「我々は善意に従い行動している」と。しかし台頭する勢力は、まさに新たに台頭していく国家の宿命として既存の国際関係と衝突する。


それが小規模であればまだよかったんですよ。
実際、韓国など高い経済成長を経験した『アジアの虎』たちは大きな経済成長を実現したとは言え、単体で世界規での国際関係に影響をもたらすことは概ねなかった。彼らがその経済規模に見合った形で軍事費を増大させても、工業国として世界中からエネルギー源や資源を買い集め始めても、あるいは周辺国と些細な領土問題があっても、一つ一つを見ればそこまで大きな変化ではない。
――ところが中国の台頭はそういうレベルで済まされる問題はない。あまりにも大きすぎる中国。故に今回のような件で即アラートが鳴り響くことになる。例えばこれが北朝鮮なんかだったらここまで大きな騒動になることもなかったでしょう。
圧倒的なスケールを持つ彼らが軍事費を増大させれば周辺国が警戒を招かないわけがないし、彼らが資源を買い集めればその影響の余波は世界中に伝わるし、挙句にはそんな巨大国家が周辺国と領土了解争いを抱えてるとなると……。
これまでも所謂悪の枢軸――キューバやらイランやら北朝鮮やら――なんかの挑発的行為が問題であったりしましたけども、やっぱりそれは世界的な議論においては枝葉のお話でしかなかったのは、結局彼らは単体ではその程度の影響力しかなかったことの証左でもあります。例えば彼らが人権弾圧を続ける独裁者を支援したところで、その規模故に、ぶっちゃけてしまえば、どうでもよかった。
ところが中国なんかがそれをやると途端に話は変わってくる。
彼らの小競り合いも、資源外交も、武器輸出も、環境破壊も、彼らだけに見られる独自の悪弊というわけでは絶対にない。しかし、それでも、その規模故の影響力を考えると彼らを非難しないわけにはいかない。
それもこれもなにもかも、中国が大きすぎるから。私たちはその大きさ故に、彼らの行為を見過ごせない。


中国問題の本質。最早意志がどうというレベルですらなく、その能力故に。
その意味ではかつてアメリカなんかでよく言われていた(今尚あちらではそれなりに支持者の多い)『中国ステークホルダー論』は一理あったりするんですよね。それは一種の、中国自身の大きさを自覚して欲しい、という要請でもあったわけだから。まぁ結局それは悲しいことに、中国さんにとって「周辺国が大国である中国に配慮すべきだ」という意味でしかなかったっていう、同床異夢なすれ違いでしかなかったわけですけど。