『スターリンの戦争』と呼ぶ人びと

「どっちもどっち」だからこそ生まれるナショナリズム


プーチン大統領「欧州をファシズムから救ったのはソビエト連邦」海外の反応|暇は無味無臭の劇薬
ロシア:軍事パレード プーチン大統領が国民鼓舞  - 毎日新聞
まぁこの辺は単純に現在のウクライナをめぐる対立から出てきた言葉というだけじゃなくて、むしろより深い根本的な価値観の対立構造――それこそ冷戦時代、あるいは「非」西洋史観の代表的な一つとしてもずっと言われているお話ではあるんですよね。
よく指摘されるお話だと、第一次世界大戦にしろ第二次世界大戦にしろ、その戦争と直接には関与の無かったアフリカや南アメリカ諸国などからすれば「一体どこが世界大戦なんだ?」というのは別に間違った認識ではないわけで。

プーチン大統領は演説で「ロシア、ソ連こそがファシストの世界領有を許さなかった」「(ソ連が)欧州を解放した」と強調し、「戦勝は多民族のロシア国民が団結する象徴だ」と愛国心を鼓舞した。

プーチン大統領「欧州をファシズムから救ったのはソビエト連邦」海外の反応|暇は無味無臭の劇薬

【モスクワ田中洋之、ブリュッセル斎藤義彦】ロシアのプーチン大統領は9日、ウクライナ南部クリミア訪問に先立ち、モスクワ・赤の広場で開かれた第二次大戦の対ドイツ戦の勝利を記念する軍事パレードに参加した。「何百万人もの犠牲と引き換えにナチスを粉砕したのは我が国だ。我々はこの崇高で不朽の事実を守り抜く」と強調し、ウクライナ問題で欧米諸国との亀裂を深める中、国民と団結する姿勢を示した。

ロシア:軍事パレード プーチン大統領が国民鼓舞  - 毎日新聞

普段から「ソ連崩壊は20世紀最大の地政学的悲劇」と言っているプーチンさんがこうした発言をするのはまぁ一貫しているとも言っていいですよね。
実際、第二次世界大戦の(少なくとも陸地での)主戦場は独ソが戦った東部戦線であったわけで。そこだけで両軍合わせて第二次世界大戦における死者の半数以上=約3000万という数を叩きだし、あのヒトラーのドイツに最も出血を強いたのはやっぱりソ連であったのです。その数字を見れば、西部戦線なんて余興でしかない、というのを間違った認識であると言うことはできませんよね。少なくとも一面では確実に真実である。
ファシズムから救ったのはともかく、しかし当時ナチスドイツと最も真剣に戦ったのがソ連スターリンである、というのは概ね正しい。
ところが西側な価値観からすればほとんどそうは言わないし、そして、そんな言説は少なくとも私たち日本を含め世界における『主流』ですらある。故に彼らはその価値観の押しつけに反発するのです。
かくしてグローバルな世界だからこそ盛り上がるナショナリズム



民族、国家、宗教ごとに異なる視点から生まれる異なる価値観について。現代世界というのはそうした相対視をやりやすい世界ではあります。それが幸福なことなのか不幸なことなのかは解りませんけど。
そしてその最前線に現状のウクライナのそれがあったりする。国内的にも国外的にも。彼らはどちらもその正当性を主張するものの、どちらにもやっぱりその正当性と同じくらい瑕疵も存在しているわけで。その瑕疵の両義性による「どっちもどっち」というのではなく、むしろその正当性の両義性故にこうして議論は限りなく平行線となる。